鍛練の理論―東洋的修行法と科学的トレーニング

鍛練の理論―東洋的修行法と科学的トレーニング

鍛練の理論―東洋的修行法と科学的トレーニング

この書籍を購入する以前から、私は高岡先生の発表される書籍には興味を持っていて、すでに数冊を購入済みでした。ただし、私にとってはそれらはとても難解なものであったため、自分にとって理解できる部分、必要な部分のみを選択して吸収する、という態度をとっていたと思います。
1980年の後半になり、私は中国武術を練習するようになっていましたが、その先生からも、経験の長いお弟子さんからも「筋トレは中国武術を理解するためには、百害あって一利なし。それを続けていては、この武術の特徴的な『チカラ』を得られないよ」と口を酸っぱくしていわれました。かといって、私の当時の肩書きは「マシン・インストラクター」。つまり、筋トレの指導員です。数ヶ月間やめてみたものの、せっかく作った体が失われていくのに耐えかね、時々筋トレを再開しては休む、というようなことを繰り返しました。ここで認識したのは、明らかに筋トレ休養期間のほう、特にそれが長いほうが私のパフォーマンスがよい、ということです。私が知るスポーツ科学では、筋力の向上はパフォーマンスのUPにつながるはずでした。しかし、中国武術にはそれが当てはまらない…。少なくとも私には。
そんなジレンマを感じていたときにこの『鍛錬の理論』に出会ったわけですが、そのときの衝撃は未だに忘れられません。その理論の中に、私がずっと感じていたジレンマの原因を解明する大きな「ヒント」が記述されていたのです。
この書籍では、一つ一つの部分的なメカニズムを実証していくスポーツ科学へ、東洋的な、より包括的なアプローチを加えることによって、大胆な概念・仮説が打ち立てられています。私が影響を受けたのは「レフパワー」と「ラフパワー」という考え方で、それらに対応する鍛錬法として「レフトレーニング」「ラフトレーニング」が存在するという部分です。
私の悩みを解決するための具体的な方法が見つかったわけではありませんが、私が「高度なレフパワーを要求する武術に対して、ラフトレーニングを適用してしまっている」という整理をすることができたのです。
これらが何を意味するのかについてご興味がある場合は、実際に書籍を手にとって確認してください。

ただ、たとえばレフトレーニングという考え方は、包括的な概念としては明快でも、心身を操作するための具体的な方法とそれを実証するデータまでは紹介されていません。包括的な概念は要素が複雑に絡み合っているので、それらの要素の関連そのものを実証するのが難しいということもあると思います。このあたりについては、先生の近作でその一部の実証に挑んだ際のデータが公開されていますので、別の機会に。

この書籍も一般の人が理解するには非常に難解です。ですが、有益なトレーニングに興味があって、『鍛錬』シリーズにまだ触れたことがない方は一読をおすすめします。

私が入手した第1版第1刷では、運動生理学的な用語の解説中に、対の用語を反対に解説する誤りがありましたが、最新版で修正されているかどうかはまだ確認していません。

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