新トレーニング革命―初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開
小山先生の善著『新トレーニング革命』とタイトルは同じながら、全く新しい理論である「初動負荷理論」(しょどうふかりろん)が追加されたことにより、非常に興味深い資料として仕上がっています。この「初動負荷理論」は、引き延ばされた筋肉が元の長さに戻ろうとする力や、より強く収縮しようとする反射(SSC:ストレッチ・ショートニング・サイクル)を利用し、筋肉の機能を高めるトレーニング理論の一つと考えられます。
1980年代後半まで、私は筋力トレーニングによる筋力の向上と自分が練習していた武術のパフォーマンスについて、必ずしも正比例の関係を作れないことに疑問を持ち続けていましたが、高岡英夫先生の「レフトレーニング」と「ラフトレーニング」の理論で一つの整理ができました。しかし、当時の書籍では、理論としては詳細でも手段としては非常に曖昧であったため、決して解決に至ったわけではありませんでした。
そんな折り、1990年代半ば頃になりますが、小山先生のこの新しい著作に出会ったわけです。今まで、筋力の向上とパフォーマンス(外面から評価できる実行結果)の改善にの関連については、「筋力が高まればパフォーマンスが高まる」と短絡的に決めつけられていただけでした。しかしながら、現実にはその両者はあまりにも乖離した要素だったのです。だからこそ、一部で「筋トレは筋肉を堅くする」「スピードが落ちる」といった表現も生まれたのでしょう。これらは一時迷信と言われましたが、事実多くのスポーツ選手がパフォーマンスの低下を経験していますし、私自身も体験しています。
しかし、この書籍に収録された「初動負荷理論」および、それを証明する各種データは、筋肉の機能とパフォーマンスの関係をかなりのレベルで明らかにしています。筋肉を太くして、筋力を大きくすることだけではなく、その筋肉が実際のパフォーマンスの際にどのような使われ方をするかを意識することで、より有益なトレーニングとすることができるのです。
トレーニング理論を初めて勉強する人にとっては少々難解かもしれませんが、非常に示唆に富んだ有益な資料となりうる書籍です。