健康のためのスポーツ医学—運動とからだのしくみ

健康のためのスポーツ医学―運動とからだのしくみ (ブルーバックス)

この本を見つける少し前に購入した『トレーニングの科学』が非常によかったため、同じ講談社ブルーバックスのこの本に興味を持ちました。エネルギー供給系のメカニズムについて、知識を補足する目的で購入した記憶がありますが、この読み物にはそれ以上の付加価値があったと思います。
印象的だったのは、当時、疲労物質としてだけの評価しかされていなかった「乳酸」について、筋肉にそれをエネルギー源として利用する機能があるという可能性を示唆していたのです。今でこそ、八田秀雄先生らが乳酸をテーマにした書籍や論文を発表されていますが、当時まだ知識の少ない私にとっては、とても興味深い示唆を与えてもらったと思っています。一つの現象を非常に限られた視点でみると、その中での事実ははっきりしたものになります。しかし、それを全体の中の一つの部分としてとらえると、いろいろな要素が絡み合うため、その部分的な結果が示すものが全体に反映されるとは限らない、ということにも気づかされました。
また、健康と運動の関係を主なテーマにしています。健康状態を維持したり、改善したりするための運動処方の考え方はその後の私にとって重要なテーマになりましたが、この書籍はその基礎を非常に分かりやすく説明できていると思います。

ただ一つ不満だったのは、筋力トレーニングが健康に及ぼすプラスの影響について、何も言及されていない、ということでした。その当時、日本のスポーツ科学はケネス・クーパー先生の『エアロビクス』理論に大きく依存していたと思われ、健康運動の研究対象となるプログラムもほとんどが有酸素運動のようでした。それに対して、筋力トレーニングは前時代的なヘティンガーの理論を蒸し返して批判することに終始していた印象があります。それを考えれば、この書籍の構成としてレジスタンス・トレーニング・エクササイズを含めることができなかったのは、いたしかたなかったのかもしれません。

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