1年

 父方の祖母が亡くなってから本日でちょうど1年になる。つい最近、このコーナーに書いたような気がするのだが、もう1年も経ってしまった。当然、この1 年は恒例だった祖母からのお菓子も年賀状も届かない。年末年始に帰省したさいには、祖母が亡くなるまで住んでいた一軒家はすでに取り壊された、という話も聞いた。

 祖母が亡くなっても、私たちの生活は基本的に変わらない。生きている人に対しては猛烈なスピードで現実が押し寄せてくる。だが、私は祖母を忘れない。

 大学のとき、アルバイトはしていたものの本当にお金がない時期があった。自分のわがままで東京まで出てきている以上、実家に頼ってはならない、という妙な意地があった。しかし、現実的に「生活ができない」。そこで、私はこの祖母にお金を無心したことがあった。確か、祖母は笑いながら2万円振り込んでくれると言ってくれた。そのとき私は祖母に「必ず返す」と言ったのだが、結局亡くなるまで返さなかったのだ。それを後悔している、というわけではない。祖母はもともと私に返すことを期待して渡したわけではないことを暗黙的に知っていたから。こんなことを頼んだのはこの祖母だけだ。

 祖母も、今は安らかに眠っているのか。それとも、天国から「あんた、努力が足りんとよ!」と、あのはきはきとした口調で見守ってくれているのだろうか?

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