私は高校時代に学校の空手道部に所属していましたが、それは中学時代に見たブルース・リーの映画の影響によるものでした。
しかし、ただそれだけの理由だったら私は初期の練習で挫折していたかもしれません。誰が見ても一番最初に退部しそうな私が最後まで残れたのは、おそらく大山倍達先生の著書を何冊か読んでいたからではないかと思います。
先生の著書には、信じられない質と量の練習内容・トレーニング内容が公開されていましたが、それに比べたら私たちの練習量はまだまだだと自分に言い聞かせることができましたから。
私の場合だと、自宅でのトレーニングも含めて平日は2-5時間、休日で6-8時間くらいだったはず(自転車通学でものすごく長い坂を登っていたからそれを含めるともう少し多いのかな?)。大山先生の場合、コンスタントに6-8時間もの時間をかけていたようですが、内容をみる限りものすごい密度です(その後、10代のブルース・リーが1日にやはり8時間は練習していたと聞き、自分の甘さを思い知りました。彼の弟子のダン・イノサント氏は60代になっても6時間の練習を続けていると聞き、現実的にかなわないまでも頑張らなければ、と思います)。
それほど憧れていた大山先生が亡くなられたときは非常にショックでした。
あわせて、総裁を失った極真会館が現在までに分裂を繰り返し、たくさんの団体に分かれてしまったことも、ある程度予測していたこととはいえ、大変さびしく感じたものです。
このことについては、いろいろな立場の方が、さまざまな場で意見を述べているので私も断片的な知識はあるつもりでした。ですが、最近知り合いとそういう話をする機会があり、実は誤った認識を持っていたとか、偏ったとらえ方をしていたのではないかという気がしました。ちょうどそんなとき、この書籍を書店で見つけたのです。
私の少年時代からの憧れてあった極真空手の歴史と、大山先生が亡くなられた後に起こったさまざまな出来事を一度整理しておこうと思い、一も二もなくこの書籍を購入し、その日のうちに一気に読んでしまいました。
もちろん、著者は一人ですし、基本的に遺族派と呼ばれた方々と行動をともにされていたということで、情報に全く偏りがないとはいえないのかもしれないのですが、大山先生の死後に発刊された他の書籍と比較するとかなり客観的にまとめられていたという印象を受けました。また、情報もかなり詳細で、各団体のお互いの立場や息づかいなどが感じられるようでした。
これで私も、少年時代の憧れに始まり、その後突きつけられた現実に整理をつけられたような気がします。
今後は、各団体の団結を見たい気持ちもありますが、お互いが切磋琢磨して空手のすばらしさを伝えていただければうれしいな、と思います。