トレーニングの科学―パワー・アップの理論と方法 (ブルーバックス 447)
1985年に東京に出てきて、しばらくの間私は新宿のスポーツクラブのフロントスタッフとしてアルバイトをしていました。もともとはトレーニング・ジムのインストラクター希望だったのですが、ジムの要員に空きはなかったので、将来的な異動を期待しながら勤務をしていた、という状況でした。
ただ、そのジムのインストラクターは、単に競技やトレーニングの経験がある、というだけではつとまるものではありません。自分の体を作ることと、顧客のお手伝いをすることは全く次元が異なることだったのです。
そんなとき、この本に出会いました。これは、一般の人にもわかるようにやさしく書かれた「読み物」ですので、初めてトレーニング科学と呼ばれるものを学ぶ私にとっても非常に有益でした。特に、エネルギー産生に関する理論(非乳酸性機構、乳酸性機構、
有酸素性機構)をこの書籍で真っ先に理解したことは、その後専門書をひもとくのに大いに役立った印象があります。この本を読むまでは単に「持久力をつけるトレーニング」「筋肉の力をつけるトレーニング」という漠然としたものでなかった知識が、ハイパワートレーニング、ミドルパワートレーニング、ローパワートレーニングという明確な整理をできたのです。
結局、この本をきっかけに本格的にスポーツトレーニングに興味を持つことになりました。現在の莫大な蔵書のスタートとなったのが、この本であった、と言っても過言ではないと思います。