空手部に所属していた高校時代、実はテコンドーにもかなりの興味を持っていました。なぜかというと、ブルース・リーに関するいくつかの書籍で、「ブルース・リーの足技はテコンドーのもの」という記述を見かけたからです(今思えば、短絡的すぎる分析ですね)。
当時私はビデオデッキも持っていないし、テコンドーに関する資料がほとんどありませんでした。空手雑誌などにときどき載る記事・写真は貴重な存在でした。その少し後に出たおそらく日本初のテコンドーの専門書(ちょっと探してみましたが、本棚の奥にあるらしく出てこないです)が出版されたのですが、一目見て「これ、空手?」という感じで、一番見てみたかった後ろ回し蹴りは掲載されていなかった記憶があります。実際に動いているところをみると、空手とは全然違うんですけど、写真と解説を見ただけの当時の私にはわかりませんでした。
東京に出てきてようやく、24回払いでビデオデッキを購入することができ、ようやく断片的ながらテコンドーの映像を集めることができるようになりました。しかし、上記のテコンドーの書籍で紹介されている動きとは全く異なる動きで、蹴りの連続技は流れるようでした。
当時の私は蹴りが得意で、リズムは全く異なるもののTVで紹介されるようなテコンドーの連続技は、普段の練習やスパーリングなどで普通に出せていました。
その後、有名アクションクラブに所属したことのある人と一緒に、別のアクションクラブの練習に参加したことがありました。なぜか私のほうがアクションクラブと間違われ、それがきっかけで「テコンドーのソウルオリンピック強化選手を集めているんだけど、一度来てみないか」という話をいただいたこともあります。しかし当時パンチが下手くそな私は、詠春拳という武術を始めたばかりでした。しかも、蹴りが得意なはずの私が、詠春拳の先生と蹴りだけでマス・スパーリング(6割程度の力でしたが)を行い、全く歯が立たなかったのです。まさか、蹴り技が苦手と思っていた詠春拳に蹴りの応酬でしてやられるとは思いませんでした。それはそれは不思議なフォームで、意外な位置から蹴って私に正確に当ててくるので、全く攻撃が読めずに混乱したことを覚えています。
そんなわけで、テコンドーへのお誘いはとても魅力的でしたが、まずは目の前のクリアしなければならない課題を優先しなければならないと思い、お断りしてしまったのです。私は本当にチャンスを生かす能力がないというか、この件に関しては本当にバカなことをしたと後悔しています。全国から集まってくる人たちを前にしてしまえば、私なんてきっと普通レベルで、選考からも漏れてしまっていたとは思います。でもこれは経験しておくべきだった…。
というわけで、この「DVDでマスター テコンドーバイブル」についても、書店で見つけて一も二もなく購入してしまいました。最近の書籍はDVDがついていて、本当にいいですね。分解写真で見れば空手的に見える動きも、動画で見れば空手とは全く異なることがわかります。
ただ、この書籍とDVDを見て思ったことは、ここで紹介されている基本技術は、以前持っていた書籍と同様、試合で見る動きや技とはかなりの乖離があるんですね。これはもちろん、私がやっていたスポーツ系の空手でも、友人たちがやっていたフルコンタクト系の空手でも同じことがいえました。私としては約束組み手的な適用だけでなく、実際のフリー・スパーリングや試合などでそのまま利用できる形の技術を見てみたかったです。
基本の蹴り技は、試合で見るような流麗なものではなく、もっとずっしりしたものですが、やはり師範の方々の蹴りの切れはすごいです。現在股関節の不調のため、私にはできなくなってしまった跳び後ろ回し蹴りをこともなげにやっています(いわゆる跳び外回しとは違う、難易度の高いものです)。また、テコンドーの後ろ回し蹴りは、上体を反対に切って股関節を中心に蹴り脚を走らせる蹴り方が主体だと思っていましたが、このDVDで紹介される後ろ回し蹴りは日本のフルコンタクト空手の試合で見られるような、上体も蹴り脚についてくるタイプのフォームでした。ブルース・リーの映画をみると、多くの場合彼は上体を反対に切る動作を使って股関節からしならせていますね。このDVDで紹介されている膝で巻き込むような後ろ回し蹴りとはちょっと違います。香港映画で蹴りがすごいといえば、ブルース・リャン(カンフー・ハッスルにも出演していましたね)ですが、この人の場合はこれらの2つのパターンとは違って、体を先に正面に向けて外回しぎみに蹴ります。比較的楽に高く蹴ることができますし、他の蹴りに続けやすいフォームです。
私はMTBによる軸足首のけがと股関節痛のため、特に飛び系の技がうまくできなくなってきていますが、このDVDを刺激に、今年中に復活させたいですね。