1985年に上京して、すぐにスポーツクラブでアルバイトを始めました。今はもう残っていないのですけど、その施設は新宿区の高層ビル街の地下にあり、1日に1000人以上の会員が訪れる老舗のクラブでした。
ある日、同僚の先輩が事務所に飛び込んできました。
「地上に出てみろ! 坂口良子が来てるぞ! あんなきれいな女は見たことがない!」
彼は興奮気味にそう語りました。褒められたことではないのでしょうが、当時19歳の私は仕事をほっぽり出し、地上に走りました。
その高層ビルの広場に彼女はいました。本当に目と鼻の先にいる絶世の美女はきらきらと輝いていました。そのような表現しかできないほど、美しかった。そのお姿は今でも脳裏に、まるでハイビジョン映像のようにリアルに残っています。撮影の合間のことだったと思います。天気は晴れだったのですが、彼女はほほえみながら空を見上げていました。今だと、紫外線を気にして、日陰にいるのが普通なのかもしれませんが、彼女は間違いなく、太陽光の下で輝いていました。
私が当時働いていたのは、新宿の高級スポーツクラブだったので、芸能人の方もたくさん見ていたし、必ずしも坂口さんが初めて見た芸能人、女優さん、というわけではなかったのですが、間近で見て一番インパクトがあったのがこのときの坂口さんでした。
当時を思い出すたびにフラッシュバックするのがこの空を見上げる坂口さんのお姿です。1985年、もしくは1986年の出来事でした。
昨年は結婚式の映像も拝見しましたし、ぴったんこカン・カンで何度も親子共演を拝見していました。素敵なご夫婦、親子にすごく好感を持っていたので、彼女がテレビに出るのをいつも楽しみにしていました。
朝、mixiのニュース欄を見て愕然としました。「死亡報道」のような表現だったので、何かのまちがいであればいい、と思っていましたが、残念ながら事実だったようです。
心よりご冥福をお祈りいたします。