親指シフトモバイル入手(2)

FMV-830MG/S

GW初日の今日、表参道にある富士通専門店「アクセス」さんにうかがいました。

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私が到着したのは午前中のことでしたが、すでに先客がいました。
その人も私と同じ「FMV-830MG/S」が目当てのようでした。その彼の前に私が3ヶ月待ち続けた「FMV-830MG/S」が鎮座しています。

この機種は、私が持っているMC4/45Cの1.4kgに対し、1.6kg(光学ドライブの変わりにウエイトセーバーを搭載した場合)とのことだったので、もう少し小さいものかと思いましたが、思ったより大きい感じがしました。また、デモ機は光学ドライブも搭載していたし、メモリも増設していたようなので、明らかに1.6kgよりは重い感じがしました。

その後、先客の彼に席を譲っていただき、親指シフトでのタイピングを体験してみましたが、打ち始めたその瞬間から「非常に素性のよいキーボード」であることを感じました。先行機種の弱点を研究し、専門店ならではの改良を加え、 830MG/S用のキーボードが出来上がったのでしょう。
MC4/45Cのクリック感の強いキーボードに対し、830MG/Sのキーボードはもっとマイルドな感じです。また、キーボードの右側が詰められてキーが小さくなっていたのに対し、MG830/Sは他のキーと同じ大きさを保っているので窮屈さがありません。
MC4/45C は右シフトキーが極端に小さく、英字のタイピングでのミスが多発するという致命的な弱点を持っていました。OASYSユーザが「実行キー」を大切にするので、それを大きくした結果だったと考えられるのですが、あれはちょっと設計ミスに近いと思います。肝心の文字入力の障害になるのですから。

そのうち、店員2名の方が電話サポートに入り、時間ができたので、ここぞとばかりに「大胸筋」「フィットネス」など専門用語が登場する長文を思いつくままに入力してみました。私専用の辞書ではないにもかかわらず、かなり精度の高い変換をしてくれるし、また変換のレスポンスも早いのが小気味よいです。何より、「タイプミス」がほとんどないのです。MC4/45Cを体験したときや、その後出た偽親指シフト搭載のLOOXを体験したときにはタイプミスが多くて、慣れが必要だと思ったのですが、今回発売された830MG/Sに関してはそのような違和感が全くないのです。

最初から買うつもりではいましたが、予想よりはるかにいい使い勝手に、非常に満足度の高い買い物になる予感がしました。
店員さんはまだ電話サポートをしています。内容から察するに、ワープロソフトのOASYSを使っている人、あるいはこれからPCに乗り換えようとしている人を対象にしているようでした。
そう、OASYS。ほとんどのPCユーザが忘れ去っているソフトウエアではないでしょうか。親指シフトユーザをはじめ、このようなユーザはそう多くないと思うのですが、このようなお客様を非常に大切にされている「アクセス」さんの姿勢には痛く感じ入りました。

電話サポートが終わった男性店員が私の意志に気づき、830MG/Sを用意してくれることになりました。そのときに、いろいろな話をうかがうことができましたが、ショップとしてオリジナルを出すことは相当大変な作業であることがわかりました。

親指シフトモバイルノートの供給が絶たれた後、アクセスさんは何度もウェブでモバイル機に関するアンケートをとり、富士通さんと交渉してきました。
富士通さんとしてもそのような要望を受けた結果なのでしょうか。FMV-LOOXという機種に「異形の」親指シフトを搭載したものを販売したことがありましたが、あのときはなぜか「アクセス」さんにクレームが集中して、かなり苦労されたそうです。「アクセス」さんもあのLOOXには正直なところかなりがっかりされたようで、今では830MG/Sのパンフレットに「×」でつぶしたLOOXキーボードの写真を載せています。
交渉の過程で、富士通さんはもう少し大型のものを、アクセスさんは逆にもう少し小型のものを提案されたのだそうです。一番大切なキーボードには厳しく注文をつけ、今回の仕上がりになったとのこと。A4に比べて薄いので十分なストロークを得られなかったこと、A4ほどの快適さはないことを反省材料とされていましたが、私にとっては A4のシリーズと比較しても全然遜色はないと感じています。

2000年夏のMC4でモバイル親指シフトが打ち切られることについて、アクセスの店員の方も全く知らなかったそうなのです。
「当時、お店にくる人には『もうすぐ冬モデルが出るので待った方がいいですよ』と伝えていたんですよ。しかし、実際には打ち切られ、その方々には本当に申し訳ないことをしたと思っています。今回830MG/Sを出せて本当によかった」
とおっしゃっていました。実は私も店員さんに「もうすぐ出ます」といわれた一人なのですが、その後私は方々探して、本家の通販サイトであるWebマートで型落ちのMC4/45Cを入手できたのですが。

しかし、世の中の親指シフトユーザのみなさんに告ぐ! 今回、アクセスさんの努力で「ショップオリジナル」という形で富士通さんは新しい親指シフトキーボードの金型を作ったわけですが、だからといって実は安心できないんです。
それは、A4のシリーズのように親指シフトを選択できるカスタマイズを富士通さんが用意せず、ショップオリジナル、という形にしたことからもわかると思います。もし、富士通さんがこの新しいキーボードをA4のシリーズ同様にカスタマイズ可能な形で展開するととんでもないコストになるのだそうです。つまり、故障などに対応したり、カスタマイズに対応したりするため、日本各地に新しいシリーズの在庫や知識がある人を置かなければなりません。富士通さんにしてみれば、ニーズのわからない商品のために。
逆に言えば、ショップオリジナルの形をとるアクセスさんのリスクは非常に大きいわけですね。すべてアクセスさんの依頼で作り、完全に買い取って、それをエンドユーザにさばいていかなければならないわけですから。普通、こんなことはよほどの情熱がなければできないことですよ。
私たち親指シフトユーザとしては、このラインナップはぜひ存続してほしいと思うのですが、この830MG/Sが売れなければ、次はないんです。新しいキーボードの金型があるとか在庫があるとか、そんな問題ではなく、親指シフト搭載機が「売れるか、売れないか」なのですよ。

ビジネスモデルの830MGシリーズはすでに販売が終了した商品です。店員さんの話では、この830MG/Sという親指シフト搭載機に関しては、おそらくボーナス商戦までは何とか供給が可能だが、それ以降は全くわからない(830MGシリーズに変わるベース機に親指シフトキーボードを搭載して販売することが可能かどうかは全くわからない)ということです。しかし、確実にいえるのは、830MG/Sが売れなければもう次はない、ということ。

既存の親指シフトユーザの方にはぜひ購入を検討していただきたいですし、ちょっと人とは変わったものに興味がある方、効率のよい日本語入力方法を求めるこだわり派の方にもぜひ注目していただきたい機種です。現在、『週刊アスキー』誌にて高橋源一郎さんがこのFMV-830MG/Sに関するレビュー記事を書いておられます。

ちなみに現在私も830MG/Sにてこの記事を入力していますが、A4のFMV-7000NA5なみに快適ですし、何よりも処理が速い。私はMacを使っているので今回無線LANのAirMac Extreme Base Stationも購入し、手さぐりで無線LANを使えるようにしたのですが、非常に快適です。子供のために4Mbpsのアニメ作品を1時間くらい見ましたが、スムースでしたよ。その子供が麦茶を830MG/Sのキーボードにぶちまけたときはあわてましたが…!今のところそれによる問題はなさそうで安心しています。

今回、これだけすばらしい機種を入手できたことに、富士通専門店「アクセス」さん、富士通株式会社殿には最大限の感謝の意を表したいと思います。

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