コンパクト親指シフトキーボード(USB)発売

親指シフターの不安

親指シフトキーボード ヘビーユーザーの私は、ここ1年、さまざまな不安に悩まされた気がします。

「親指シフト悲喜こもごも」にも書きましたとおり、ちょうど1年ほど前に、富士通株式会社のワープロ専用機市場からの撤退が発表され、同時期に株式会社リュウドの高級親指シフトキーボード製造打ち切りもアナウンスされました。

さらに、最近ではコンパクトタイプのパソコン本体には、PS2コネクタを備えないタイプの製品も多くみられるようになってきました。しかし、これまで富士通から発売されている親指シフトキーボード(FMV-KB211、FMV-KB611)はすべてPS2タイプだし、製造中止になったリュウドのキーボードもPS2。当然、私が集めてきたキーボードもすべてPS2タイプになります。もし、今後、レガシーフリーの傾向が進めば(きっと急速に進むのでしょうが…)、PCで親指シフトを使用できる範囲がどんどん狭められていくことになります。

そんな状況の中、2001年の3月に、「親指シフト・キーボードを普及させる会」のサイトで、「コンパクトキーボードの試作機」が写真入りの体験談で紹介されているのを発見したのです。
コンパクトタイプの試作機

最初に紹介された試作機は、富士通高見澤コンポーネント株式会社(当時。現富士通コンポーネント株式会社)が開発中のものでした。これは、FMV-KB611という、OASYS利用者向けのキーボードと互換性のあるもの(FMV-KB611と同じドライバで動くもの)でした。

残念ながら、コネクタのタイプはUSBではなく、PS2のままでした。ただ、新しい親指シフトキーボードを作ろうという試みがあること、それが今まで製品化されたことがないような、大幅なコンパクト化が図られていることに対しては、大いなる興味を持ったものです。当時は商品化されるかどうかも分からないとのことでしたが、これほどコンセプトがはっきりした、完全に動くものがあるのであれば、何らかの形で発売されるだろうと私は期待をしていました。
ついにUSBキーボードのアナウンス

それから待つこと半年。9月の末になり、2001年冬に待ちに待った「USBタイプのキーボード発売」について、「親指シフト・キーボードを普及させる会」からアナウンス速報がありました。しかも、コンパクトタイプ(富士通コンポーネント株式会社)だけでなく、フルサイズのキーボード(富士通株式会社)も発売になるとのこと。「ああ、これで親指シフトは大丈夫!」という安堵感と同時に、「どんな使い心地になるのだろう?」という期待感が沸き上がり、久々に心が踊った感じがしました。
あれ?

が…。最新の試作品をみると、最初の試作品とは明らかにキー配列が違います。セミコロン(;)のすぐ右にあった「BackSpace(後退キー)」、そしてその右となりの「ESC(取消キー)」がなくなっているのです!かなの配列、タブキーこそOASYS準拠ですが、「BackSpace」や「ESC」キーが、通常のJISキーボードに準拠したものになってしまっているのでした!

↑ コンパクトタイプの”BackSpace”

↑ Rboard Pro for PCの”BackSpace”と”ESC”

また、富士通株式会社から発売されるというFMV-KB231というUSB対応フルサイズ親指シフトキーボードも、既発のKB211というPS2タイプのキーボード互換のキー配置になっていて、私が普段使っているRboardやFMV-KB611とはBackSpace(後退)キー、ESC(取消)キー、さらにはTab(タブ)キーの位置まで異なっていることがわかりました。

富士通株式会社、富士通コンポーネント株式会社が親指シフトキーボードの新製品を出してくれたことは、「道が開けた」ようで本当にうれしかったのですが、コンパクトタイプのキー配列が最初の試作品から変更されてしまったこと、あるいはフルサイズキーボードのタイプがFMV-KB211とほぼ同じ形状であったことはかなりショックを受けました。

私は現在、ノートのFMV-BIBLO MC4/45Cを所持していますが、このキーボード配列がFMV-KB611というOASYS色の濃いキーボードの配列に準じています。ノートPCの場合、ハードウエア的にはキーボードを交換することができません。このため、ノートと全く異なる配置のキーボードを利用することはなるべく避けたかったのですね。

この時点で、USBキーボードが発売されたことはとてもうれしいことではあるけれども、「新USBキーボードの導入はとりあえず見送る」方向に私の気持ちが傾きつつありました。
それでも
< 固有のドライバは不必要>

それでも、時間が経過し、このキーボードの詳細が明らかになっていくにつれ、「1個はほしい」と思えるような状況になっていったのです。

なによりUSBインターフェースを備えたキーボードであり、私が現在使用しているフルキーボード(OAKB-193、Rboard Pro for PC、FMV-KB611)のように、キーボード固有のドライバを必要としません。そのかわり、富士通株式会社の「Japanist 2002」というIMEを使用して、キーの配列を親指シフト化することになっています。設定によっては、刻印こそ異なるものの、私が現在使用しているフルキーボードとほぼ同じ配列にできるようです。もともと、私はJapanist V1(バージョン1)を利用しているので、どっちみちIMEのupdateはする予定でした。そのため、このキーボードのために新しいIMEをインストールすることについては抵抗がありません。

この方法の問題点といえば、Japanist2002を起動しているとき以外は、BackSpaceキーやEscキーの位置入れ換えが有効にならないことくらいでしょうか? しかし、Japanist2002の「自動的に起動する」オプションを有効にすれば、入力が必要なほとんどのシチュエーションで上記の配列が可能になると考えられます。

また、IMEの親指機能をオフにすれば、タブキーの位置以外は、通常のJISキーボードと同様の配置になり、他の人が使うときにも困りません(私の家内はJISかな入力です)。
< 左右親指キーと、変換・無変換キーの疑似独立>

何人かのテスターの方が「親指シフト・キーボードを普及させる会」の掲示板などで報告している「親指左」キーと「無変換」キー、および「親指右」キーと「変換」キーが同じキーコードを吐き出していて、押下結果が同じになる、という点は少々気になりました。「親指左」と「無変換」、「親指右」と「変換」を物理的(ハードウエア的)にも兼ねているMC4/45Cでも誤判定が多く、単に文字入力がしたかったのに違う文字が入力された上で変換・無変換されてしまったり、単に無変換するつもりだったのが、違う文字の入力になってしまったりするのです。これはかなりのストレスであり、私の場合は、「親指左」と「無変換」、「親指右」と「変換」が独立したものでないと日常的に使うにはつらいキーボードということになります。
キーボード比較
上段がFMV-BIBLO MC4/45C(共有型)
下段がFKB8579-661(擬似独立型)

ただ、今回発売されるキーボードの場合、「親指左」と「無変換」、「親指右」と「変換」については、それぞれ同じキーコードを吐き出しているとしても、ハードウエア的には独立しています。この点で、ハードウエア的にも共有しているMC4/45Cと比較すると、「変換」「無変換」キーへの移動が生じることになるため、より誤判定は少なくなるのではないかという期待はあります。

やはり自分で使って試してみたくなりました。
コンパクト型を注文

その後、キーボードの正式発売日の発表を経て、12月7日、いくつかの店舗で「USB親指シフトキーボード(コンパクト) FKB8579-661USB」が販売されることになりました。発売当日については、私は妹の結婚式のため、鹿児島に帰省していましたから、事前の注文はしていませんでした。

フルサイズのFMV-KB231については、出荷が遅れて12月中旬-下旬の発売になったようですが、親指左のとなりにTabキーに割り当てられるキーが物理的に存在しないため、所持している他のキーボードと同様の使い勝手を得られません。特にノート型との不整合は致命的なため、今回はパスです。

私はHTMLやJavaScript、Javaのソースファイルを扱うことが多く、タブキーを非常に高頻度に使います。小指側にあるより、親指左の横にあるほうが効率的で好ましいのです(タブを小指で行うFMV-KB211と、親指で行うRboard Pro for PCやFMV-KB611では、疲れかたが全然違います)。

そのようなわけで、鹿児島より戻ってきたあと、私は親指シフトの品揃えが豊富な表参道の「ACCESS」に注文してみました。こちらでは過去にOASYS-Vというノートパソコンを購入したこともありましたし、他の製品の購入にあたって、専門的なアドバイスをしていただけるスタッフの方々がいらっしゃったからです。直接店舗に行ってもよかったのですが、平日は閉店に間に合わないため、オンラインショップを利用することにしました。
私の感想
< <外観・サイズ>>

パームレストを取り外した状態のFKB8579-661

注文後、数日で到着しましたが、まず箱が小さいのにビックリしました。取り出してみると、フルキーボードのテンキーやファンクションキーを取り除いた部分しか存在しません。専用のパームレストが用意され、好みによって取り付けることができます(標準で付属しています)。

FMV-KB611(上段)とFKB-8579-661(中・下段)の比較。
大きさの差が一目瞭然ですね。
パームレストをつけても(下段)邪魔にならない。
< <設定>>

このキーボードには、富士通のIMEである「Japanist 2002」が付属しています。私の場合、すでにJapanist2002はOASYS2002と同時にインストール済みだったので、いったんRboard用のドライバとかなロック制御用のソフトウエアを外した上で、通常の106/109キーボード(Ctrl+英数)ドライバに戻し、USBコンパクトキーボードを接続してみました。

マシンを再起動後、エディタを使用してみると、Japanist2002の設定がデフォルトでコンパクトキーボードを自動認識するようになっていたので、いきなり親指シフト入力ができるようになっていました。ちなみにこの文書もFKB8579-661で入力を開始しました。
< <非常に高い左右の親指キー>>

一見して気づいたのは、従来のフルキーボードと比較して、やたらと左右の親指キーが高いことです。これについては、少々違和感がありました。ただ、あとで述べる「独特のクリック感」「親指キーの固さ」などにより、かなキーと親指キーを同時打鍵したときに、最上段、中段のかなキーについては、そちらが先に押されてしまうという傾向が私にはみられました。そういったことを解決するために(より早く親指キーが当たるように)工夫されたものなのかもしれません。

しかし、逆に再下段のかなキーを押すときは、逆にシフトだけが先に押される問題が私の場合は多発しています。私はあまり好ましいとは思えないのですが。
< <キータッチ>>

そのキーの感触ですが、重目です。というより従来のフルサイズとずいぶん違います。このキーボードには軽いクリック感があります。ゆっくりとキーを押下したときに、当初は重く、ある時点(閾値)を超えたときに急に「ストン」と沈むような感じですね。ちょっと表現が難しいです。その上で十分に押し込まないとタイピングに失敗してしまうのですが、従来のフルキーボードの場合は軽いタッチで途中で引っかかることなくスムースに最後まで押せるのが特徴でした。これは、FKB8579-661がゴムスイッチを採用していて、従来のフルキーボードが金属スイッチを利用していることによるものと思われます。

このため、従来と同じ感覚で入力すると、どうしても失敗が多くなってしまいますね。ただ、決して「いやな」キータッチという感じはなく、従来の親指シフトキーボードとかなり感覚が異なるため、新鮮な印象を受け、またそれを楽しむことができました。ただ、「重いな」とは思いますね。

その結果、フルキーボード各種と比較すると一定量の文章入力後の疲労がかなり強くなる印象を受けます。FKB8579-661を半月ほどフルに使用したあと、OAKB-193に差し替えてみましたが、やはりこちらのほうが格段に「ラク」な印象があります。ヘビーユーザーが長時間タイピングする目的なら、従来のRboard Pro for PCやFMV-KB611などのほうがよいかもしれません。大量の入力を前提としていて、その上でUSBがよいなら、今回私は購入を見送りましたが、富士通株式会社のフルサイズキーボード、FMV-KB231も視野に入ると思われます(実際に使用していないので、はっきりとしたことはいえませんが)。ただ、こちらはJapanist2002は付属しません。
< <誤って確定することが多い>>

そして、私にとってFKB8579-661を使い続ける上で最も頭が痛い問題が存在していました。それは、「誤確定」の多さです。確かに、ノートの MC4/45Cと比較すれば、少ないと思います。とはいえ、フルキーボードと比較すると明らかに目立ちます。親指シフトでは濁点を振るためにかなキーと反対側の手の側の親指シフトキーを打鍵するのですが、特に下段のかなキーを打鍵したときに判定ミスをして、変換してしまったり、無変換をしてしまったりすることが多いです。

上記については、「日本語入力コンソーシアム」に登録されている「親指シフト練習(β版)」を利用してテストしてみたのですが、一定以上のスピードで入力をする場合、誤確定を0%にするのは結構難しいことがわかりました。文章の入力テストを各テストで10回程度行ったのですが、やはり1テストに1-2箇所、誤確定をしてしまいます。特に、濁音、半濁音を入力する部分で失敗しているようです。

その後、OAKB-193(富士通のOASYS-Vシリーズ用のキーボード。現在は発売されていないようです)に差し替えてテストを行ってみましたが、誤確定は皆無に等しくなった上、入力速度の記録も次々と更新してしまいました。多分、「左親指」と「無変換」、「右親指」と「変換」のキーコードが独立していれば、FKB8579-661もフルキーボードにせまる成績を残せるのではないかと想像するのですが…。USBインターフェースでは実現が難しいのかもしれません。予想していたこととはいえ、大きな弱点になっていると思います。

少しでも誤確定を減らすべく、チルトフットを立てたり、付属のパームレストをつけたり、いろいろと試しましたが、現状では、残念ながらフルキーボードの打鍵判定・使用感には敵わないです。
< <付属のパームレスト>>

パームレストを取り付けた状態

それにしても、パームレスト、打鍵時にガタガタするのはいただけませんね。私の場合、両手を浮かせて打鍵するので、パームレストに頼る機会は少ないのですが。また、チルトフットを立てた状態では、パームレストが浮いた感じになり、変換キー・無変換キーが押しづらくなり、ほとんど実用外になります。変換・無変換キーを使わず、左右のシフトキーを利用して変換・無変換を行う人向けですかね。
< <キー配列の変更オプションについて>>

また、Japanist2002によるキー配置について、ちょっと気になることがありました。USBキーボードにおいては、Japanist2002の「快速親指シフト」というキーボードエミュレーション機能を利用して、親指シフトの配列を実現しています。

このエミュレーションの形態には、「モード1」「モード1(後退・取消付き)」「モード2(後退・取消付き)」の3種類があり、どれかひとつを選択できる形式になっています。

「モード1」は「かな」の配列のみを親指シフト化し、「モード1(後退・取消付き)」では、かな入力時のみBackSpaceとEscキーをホームポジションに置いた右手小指の右側に配置します。そして、「モード2(後退・取消付き)」においては、英字入力の場合にも、BackSpaceとEsc キーを右手小指横に配置するようになっています。

私の場合は、ノート型のMC4/45Cに近い環境で使用したいため、モード2(後退・取消付き)」を選択したいところなのですが、Japanist2002の設定画面で、キーボードタイプを「親指シフトキーボード(USB:FKB8579-661)」に設定してしまうと「モード2(後退・取消付き)」オプションが「グレー」になってしまって、選択できません。そのため、私は、このキーボードではなく、「106/109キーボード」を選択して使っています。このキーボードを選択すると、モード2も選択可能になるからなのです。このためには、Japanist2002の環境設定にて、「USB親指シフトキーボードの接続/切断の自動判定」機能をオフにしておかなければなりません。

このキーボードで誤判定率が高いのは、もしかしてキーボード選択による問題があるのかという不安もありましたので、自動判定された設定も試してみましたが、誤判定にはあまり関係ないようです。このクリック感に慣れが必要なのかもしれませんね。
< <固有のドライバが必要でないのはうれしい>>

それにしても、このキーボードに関しては従来のフルキーボードのような、それぞれ固有のドライバを組み込んだりする必要がなく、設定も楽です。フルキーボードの場合は、基本的にキーボード固有のドライバをインストールしなければならず、これがまたWindowsに警告メッセージを出されてしまうものですから、面倒な上に精神衛生上もよくありません。この点、USBタイプのFKB8579-661なら、これから親指シフトを始めようという人にもおすすめしやすいものになっていると思われます。もちろん、IMEを「乗り換えてもよい」という人対象ですけれど。ただ、このキーボードはソフトウエアエミュレーションですから、メーカー保証外の使い方になりますが、「日本語入力コンソーシアム」などに公開されている「親指ひゅんQ」のようなエミュレータでも基本的に動くはずです。この場合、Japanist以外のIMEでも使用可能、ということになりますね。ただ、私はJapanist以外を使いませんので、試してはおりません。

ただ、つなぐだけで簡単であるはずのこのキーボードにもいくつかの注意点があります。過去にUSBキーボードしか使ったことがない人の場合、 106/109キーボードのドライバがシステムにインストールされておらず、誤動作を起こす可能性があるようです。また、Windows2000を利用している人の場合、106/109キーボードを正しく検出しておくために、ServicePack2以降をインストールしておく必要があるそうです。
< <付属のJapanist 2002 … 富士通製IME>>

でも、このJapanist2002、Windows標準のIME98,2000,2002などと比較すると、より強化された入力予測など、目新しいメリットが盛りだくさん。乗り換えても損はないと思いますね。JapanistはV1のころからかなり優れたIMEとして完成度も高かったのですが、家内が使用しているATOK13(現時点で最新ではないのですが)などと比較しても私は遜色ないと思っています。

また、Japanistのウリである「入力予測」についても、今回初めて使ってみての驚きがありました。こちらは過去に入力・変換した文字列の候補を、2文字入力した時点でリストアップし、矢印キーやCtrl+変換などの方法で、リアルタイムに選択できるという機能です。タイピングに自信がある私は、正直「入力予測なんて」と思っていましたが、ある特定の文書を作るような場合、この入力予測が大変役立つことがわかりました。この辞書については、過去に作成したドキュメントから取り込むことも可能なので、非常に便利ですね。

いずれにせよ、このコンパクトキーボードについては、多少のストレスは感じますが、ずいぶん楽しませてもらっています。このキーボード、早速Yahoo! オークションに出品されていたので、家内に落札してもらってもう1台ストックしてあります。秋葉原のぷらっとホームにて購入したもののようです。

このページでは、FKB8579-661に関する感想をまとめてみました。このキーボードについては、他のキーボードとの比較も含めて、別項にまとめてみることにします。