親指シフト悲喜こもごも

富士通がついにOASYS専用機市場から撤退

Windows95の発売以来、急速にパソコンが一般家庭に持ち込まれるようになりました。その結果、ワープロ専用機はパソコンに置きかえられるようになり、昨年までに多くのメーカーがワープロ専用機の市場から撤退していきました。そして、親指シフトキーボードという武器を搭載していたオアシス (OASYS)も、富士通の撤退によりその幕を下ろすことになったのです。

私がパソコンを使うようになったのは1994年のことであり、それまではワープロ専用機以外を使うことに興味を持っていませんでした。私の考えを表現する器具として、オアシスというワープロがあまりにも優れていたために、パソコンは全く必要なかったためです。しかし、Windows95が登場し、いつのまにか専用機を凌駕するワープロソフトが販売されるようになると、専用機の持つ意義は薄れていました。私自身オアシスを使うことはなくなっていったのです。

このような状況を考えると、今回の富士通のワープロ専用機撤退については、数年前から十分に予想されたことで、仕方がないことだと思います。長い歴史を考えれば、非常に寂しい気もしますが、富士通によるとオアシスは今後パソコンソフトウエアとして親指シフトとともに生き残るということ。現在、私はほとんどワープロソフトを使用しませんが、専用機のノウハウを活かして、今後も頑張ってほしいものです。
R-board Pro for PCも

富士通のオアシス製造中止と同じころ、独自に親指シフトキーボードを開発しておられるリュウド社からも、R borad Pro for PCの生産終了に伴うアナウンスがありました。

私はリュウド社製親指シフトキーボードである「R borad Pro for PC」を利用していますが、材料調達が困難になることにより、製造打ち切りになってしまうのだそうです。正直あんなにいいキーボードはなかったのですが、3月10日以降、新製品を入手することは難しくなりそうです。

今後、私はMacintoshの購入も考えていたのですが、Macで使用できるハードウエアはRboard以外にありませんでした。また、親指シフトをエミュレーションするソフトも、技術的な問題でOS Xをサポートしないようです。もしかしたら、今後Macの親指シフト入力環境は廃れてしまうのかもしれません。これは非常に残念なことです。

今から購入しておけば、ということもありますが、おそらくはWindowsで使えるキーボードをバックアップとして購入することが先決になり、Mac用のキーボードを購入する余裕はありません。Macおよびキーボードの購入は現状ではあきらめ、ということになりそうです。

WindowsとMacを一つのキーボードで共用できればいいのですが、親指シフトキーボードはおそらく特殊なキーアサインがあるため、難しいようですね。
でも頑張っていると思う

オアシスの撤退で、今後親指シフトキーボードの利用者が減少することは十分に考えられますが、親指シフトキーボードの将来が全くないかというとそうではないと思います。

最近、富士通さんはJapanistという日本語入力IMEを発売しましたが、従来のソフトウエアを超えたなかなかよい出来の製品だと思います。現在、私は今まで使ってきたOAKに変えて、Japanistを利用していますが、非常に快適です。

このJapanistには、なんと「快速親指シフト」という親指シフトエミュレーション機能が搭載されています。実際には、OAK-V8というソフトから導入されていた機能ではあるのですが、この機能をオンにして使うと(もちろん、デフォルトはオフですが)、普通の106キーボードの配列が親指シフト配列に変更され、親指シフト入力が可能になるのです。

今まで、富士通の製品の広告や雑誌などでの紹介で「親指シフト」という言葉が出てくることは非常に少なかったのですが、このソフトウエアは「親指シフト入力ができる」ということを前面に押し出してきています。少しでも多くの人が親指シフト入力を体験できる機会をつくっているわけで、親指ユーザーにとってはとてもうれしい傾向といえます。ユーザがいる限り、親指シフトキーボードは滅亡しないでしょうから。

現在、Japanistの体験版が富士通によって配布されています。ローマ字入力による不合理に不満を感じておられる方は、このJapanistで親指シフト入力を体験してみることをおすすめします。

親指シフトキーボードやソフトウエアを作り続けるということは、現状ではコストに見合った売り上げを得られず、企業としての負担は大きいのかもしれませんが、私としては、既存のユーザを大切にする姿勢のあらわれとして評価したいですし、またありがたいと思っています。
私は続ける

よく友人たちに「親指シフトなんて訳のわからないキーボードを使うのはやめなよ」と冗談まじりで忠告されます。

しかし、親指シフトをいったん知ってしまった私には、ローマ字入力やJISかな入力に戻ることはもはや後退でしかありません。将来親指シフトキーボード製造打ち切りなんてことになったら、きっと親指シフトキーボードとそれをサポートするパソコンを買いだめておいて、一生使い続けると思います。

最近、親指シフトキーボード関連のサイトをみる機会が多くなっているのですが、親指シフトキーボードを普及させるために、かな以外の配置を通常の JISキーボードに準拠したほうがよい、という意見が多数派のように思われます。でも、私にとっての親指シフトキーボードのよさは、単純に「仮名の配列が優れている」、というだけではなく、「後退キーが押しやすい位置にある」とか、「タブキーが利用しやすい位置にある」というところにもあるのです。

現在のJISキーボードに迎合した製品をつくることも底辺拡大には重要なのでしょうが、私としては現在のスタイル(OASYS色濃厚)のキーボードには何とか生き残ってほしいなあ。