先代ロードバイク Miyata ALFREX CARBON

友人に譲る目的で、以前6年以上にわたって利用していたロードバイクを洗浄・修理してみることにした。
そのバイクは、Miyata ALFREX CARBON(以下、ALFREX)という製品で、1992年に購入したものである。フレームの前三角の部分はカーボンチューブをアルミのラグでつなぎ、軽量化を図ったモデルであった。

今でもそうだが、自転車の素材としてのカーボンは、それまで主流だったクロムモリブデン(クロモリ)と比べると高価である。このため、当時もフレーム全部がカーボン製の車体は、モノコック(一体成形)であってもチューブをラグでつないだものでも、非常に高価なものだった。
そこで、カーボンをフレームに使いながらも価格を落とすために、当時はフレームの前三角はカーボンでつくり、前輪を支えるフロントフォークと後ろ三角を作るシートステー、チェーンステーは他の素材という組み合わせがよくみられたものだ。私が購入したALFREXもこういったバイクの一つで、フロントフォークとシートステー・チェーンステーはアルミ製だった。
今では、単に価格を抑える目的ではなく、アルミ、カーボンの特性を活かした配置を行うようになっている。つまり、前三角に剛性が高いアルミを用い、フロントフォークに振動吸収性が高いカーボンを配置するというものである。価格帯によっては、後ろ三角のシートステー、あるいはチェーンステーに至るまでカーボンを採り入れているものもある。私が現在乗っているBIANCHI ML3 Veloce Mix(以下ML3)は、フレームが前三角、後ろ三角ともにアルミであり、フロントフォークのみカーボンだ。

さて、ALFREXの話に戻ろう。当時の資料が何一つないのだが、価格は確か145,000円で、車体重量は10.5kgだったと思う。それまで乗っていたクロモリバイクのdiossと比較すると、カーボン、アルミの組み合わせのせいか、フレームが大きくなったにもかかわらずかなり軽く感じたものだ。
このバイクの購入当時は、フロント、リアの変速レバーは前三角の下のチューブであるダウンチューブについていた。すでにSISというシステムが採用され、後方7段の変速については「カチッ、カチッ」とちょうどよい位置に決まるようになっていた。diossではまだそのシステムは採用されておらず、感覚的にちょうどいい位置をさがしながら変速しなければならなかった。これだけでも格段の差があるといえるが、しかし運転中に片手をハンドルから離し、変速作業を行うというのは、高速にで走っているときにはあまりやさしいことではない。実際、私もいちいち変速するのが面倒で、ギアを一番平均的な位置に決めた状態にするだけで、変速レバーを使う機会は非常に少なかったと思う。そのうえ、当時は「脚の筋力を最大限に利用する」というような変なこだわりもあって、常に一番高いギア比に保ったりもしていたのだ。

このころはすでに、伝統的なダウンチューブに設置するレバーの他に、ブレーキレバーにシフト機能を組み込んだ製品がShimanoより販売されるようになっていて、価格帯の高いロードバイクにはそれが搭載されるようになっていた。価格の問題もあり、購入時はこのSTIと呼ばれるレバーを搭載したロードバイクを選択することができなかった。しかし、その後、適切なシフティングの必要性を理解していく過程で、どうしてもSTIレバーが欲しくなってしまった。
そこでSTIレバーの購入の検討を始めた。私のバイクにはShimano 105というグレードのパーツが搭載されていたが、私が検討を始めた当時はおそらくその上のグレードである、ULTEGRA, DURA ACEにしかSTIはラインナップされていなかったような記憶がある。最上位のDURA ACEでは価格が高すぎるので、ULTEGRAを選択することになるが、これらはすでに8速になっていたので、シフトレバーだけでなく、フロントディレーラー(前方の歯車、チェーンリングを選択する機器)、リアディレーラー(後ろ側の歯車を選択する機器)、チェーンなどの交換も必要になることが分かった。
ALFREXについているパーツをdiossに付け替えて、妻に利用させよう、という考えもあったので、結局上記のパーツに加え、前後ブレーキアーチも購入することになった。

パーツには日本語によるかなり詳細な説明書がついていたが、変速系の全パーツとチェーンの付け替えは初めてチャレンジする私にとってはかなりの大仕事だった。それでも時間をかけてなんとか作業を終え、105よりも若干高級感のあるULTEGRAパーツがALFREXに装備されたのである。
早速乗ってみると、その操作感は格別であった。
ハンドルから手を離す → レバーに触れる → 変速する
という3アクションから
ハンドルに手をかけたままレバーに触れる → 変速する
という2つのアクションに変わったのだから。多少、変速時にポイントがはずれることはあったものの、ハンドルから手を離してシフティングしていたそれまでとは大きな差である。当然、私がシフトチェンジをする回数は大きく増えたのだった。

しかし、そんなに乗らないうちにSTIレバーの調子がおかしくなる。リア側のシフトアップ(大きな歯車から小さな歯車へ)をしようと、ブレーキレバーの内側の小さなレバーを動かしても、ときどき空振りするようになってしまったのである。そして、それが少しずつひどくなり、空振りするほうが多くなっていった。その後、シフトチェンジが決まることがまれになってしまい、最後はまったく効かなくなってしまっていた。
最後の2年くらいはそのような不調のひどい状態で乗っていたと思う。シフトが効かなくなってしまってからは自転車に乗る気も失せ、かわいそうなALFREXはそのまま5年近くも乗らないで放置されてしまった。

今年、改めてロードバイクに乗るのに、ALFREXを修理するのか、別のロードバイクを購入するのか、かなり悩んだ。
というのは、ALFREXの状態を改めて調べてみたとき、非常に大きなダメージを負っていたからだ。このままALFREXの変速機を交換し、同じグレードのパーツで交換するとなると非常に費用がかかることが分かったのだ。当時のULTEGRAというパーツは現在の105と同等だというのだが、それでもかなりの費用になるため、TIAGRAというパーツへの交換を検討した。ショップに頼むと工賃が30,000円程度かかりそうだったので、同じパーツをつけた新車の完成車とさほど変わらない額になってしまう。
このようなわけで、自転車全般に詳しい友人のKさんにいろいろとアドバイスをいただいたわけだが、ALFREXを修理する場合には彼が工賃無料でパーツ交換をしてくれる、という話にもなったので、最後まで新車にするか修理にするか悩んでしまった。
最終的には以前このコーナーで書いたように、BIANCHI ML3に一目惚れして購入してしまうことになったのだが。

ALFREXには気の毒なことをしてしまったが、ここに来て友人が引き取ってくれる、という話が出てきた。このまま廃車としてしまうより、やはり必要な人に使ってもらうのが一番だ。

しかし、問題は「乗れるか」ということ。自宅駐輪場は上下2段になっているが、その上段に置いたままになっているALFREXを自宅のある4Fまで上げ、いろいろと調べてみた。その結果、予測した通りかなりの部分で傷みが見られたのだった。
1) STIレバー。ブレーキ機能は大丈夫であるものの、シフト機能はダメ。メッキも腐食で浮き上がってきているような状況。
2) ブレーキワイヤー、シフトワイヤーは表面に出ている部分がさびているため、交換が必要。
3) ブレーキアーチの汚れ、ブレーキシュー(ホイールのリムという部分を挟むゴム)の減り方がひどい。パーツがさびてしまっている。
4) チェーンはさびて色が変わっているが、極端にひどくはない感じ。油脂が表面に残っていたからか。
5) フロントディレーラーは、ガイドプレートというチェーンの位置を変えるプレートのさびがひどい。
6) リアディレーラーは汚れがひどい。
7) スプロケット(後ろの歯車)は汚れてはいるが、さびなどはなさそう。
8) サドルはカバーが全部破れ、中のスポンジが出ている。
9) 両タイヤははずしたままになっている。
10) 後輪ホイールのさびがひどい。
11) フレーム前三角のカーボンの表面を覆っている保護膜がところどころ破れている。
12) フロントフォークのアルミの汚れがひどい。
13) 後ろ三角のアルミの汚れや表面の腐食がひどい。
14) 前三角のカーボンチューブをつなぐアルミラグの表面の腐食が見られる。

上記のような状態だったので、ALFREXをふたたび快適に乗れるようにするためには、フレームやパーツの洗浄といくつかのパーツ交換が必要であると思われた。

まずは、私がよくいく阿佐ヶ谷のフレンド商会というショップに行き、ブレーキ・シフターのワイヤー、サドル、チューブラータイヤ(タイヤの中にチューブがある)2本、リムセメントとクリーナー(ホイールの外周のリム部分にチューブラータイヤを貼り付けたり、古いセメントを取り除くため)、そして各部の汚れを落とすためのケミカルを購入した。

まず、チェーンの汚れを買ってきたケミカルで落としてみたが、かなり強力で、そこそこきれいになり動きも良くなった。これはあとで注油することで復活しそうだ。
フレームから各部品を取り外し、洗浄する。特にリアディレーラーは汚れていたので、分解できるところを分解して、細部の汚れを落としていった。ボルトなどの部品のさびはいたしかたないものの、本体はかなりきれいになった。今回はシフターがないため、試せないものの、うまく機能する可能性は高い。
フレームは、アルミ部分にこびりついた汚れをフロントフォーク、ラグ、後ろ三角のチェーンステー、シートステーと落としていく。フロントフォークは表面の腐食は少なく、かなりきれいになったものの、それ以外の汚れは思ったより落とせない。特にクランク周りのラグの部分の汚れがひどいので、なんとかクランクを抜いてきれいにしたいと思ったのだったが、残念ながら私はクランクを抜くための工具を持っていなかった。
買ってきたケミカルも勢いよくなくなっていくし、これらは無害な物質ではないので今回の清掃で完全に落とすことはあきらめた。
ブレーキアーチはさほどきれいにならないので、以前ALFREXに取り付けていて現在はdiossについている105のパーツに交換することにした。こちらはベランダで袋に入れて保管していたので比較的きれいだ。また、あまり使っていなかったためか、ブレーキシューの減りも少なく、また減り方もきれいだ。
後輪のリムは表面の腐食がひどく、初めからきれいにすることをあきらめてしまった。

ブレーキレバーはブレーキアーチ同様、もともとALFREXについていたブレーキレバーに変更した。

最後にサドル、前後のタイヤを取り付け、チェーンをつないで、ALFREXは一応「走れる」自転車に変身した。本当は変速も復活させたかったが、それは友人が引き取ったあとに必要なグレードのパーツなどを調達し、手入れをしてくれるだろう。

試しに近くを走ってみると、ギアは重い状態だがチューブラータイヤ、カーボンフレームということもあってか、乗り心地は比較的柔らかい感じで快適だ。必要最低限の部品しか付いていない状態であることもあってか、車体も軽い。
ロードバイクについては、少し前に「今の自転車のほうが疲れを感じる」と書いたが、地面の振動の伝わり方などは、現在乗っているML3とさほど変わらない。ただ、ライディングポジションが多少異なっていることが分かった。ALFREXのハンドル、サドルの高さは以前乗っていた当時から変更していないが、サドルは若干低め、ハンドルは若干高めの位置にセッティングされていた。このため、ML3のセッティングより前傾が少なくなっているはずであり、このような結果が疲れの差となって現れているのではないかと思われる。

ALFREXはまだ、フレームについてはしっかりしているので、これはパーツを変えて乗ったらまだまだ快適な乗り心地を提供してくれるのではないかと思う。友人には懇意にしているプロ意識の高い自転車屋があるようなので、そこに相談して必要なパーツを交換してもらうのではないだろうか?
おそらく、今後はこの友人と並んで走ることもあるだろう。そのときに、新生ALFREXに会うのを楽しみにしたい。

また、現在乗っているML3が決してALFREXのような状態になることがないよう、しっかり反省してこまめにメンテナンスをしていきたい。