楽しさの基準

今日は約1年ぶりに富士見パノラマスキー場へ行ってきた。
その1年前、私はレンタルバイクを借りて初めてMTBにチャレンジしたのだった。そのとき、目的のCコースの下りは4回とも好調だったのだが、最後の最後に無理をして4xのコースで転倒し、かなりの傷を負ってしまった。特に左足首のねんざについては、今でも痛みが残っている。富士見パノラマはそれ以来、2回目だ。

ただ、今日は私のコンディションが非常によくない。昨日のボクシング観戦の途中から鼻水が止まらなくなり、花粉症のような状態になって早朝まで一晩眠れなかったのだ。
併せて、今回は約13km先の調布ICで待ち合わせているため、そこまで自走しなければならない。荷物を持って走るので、ペダルはバインディング、シューズもそれに対応するものを選択した。ボディプロテクターもリュックに収納できなかったため、肘・膝のプロテクターのみで走ることになった。
調布ICまでの自走の段階で、もしかしたら今日の走行は無理ではないかと思った。調布IC近くのコンビニでは友人と落ち合い、とりあえず車中で休ませてもらうことを考えてとりあえず同行させてもらうことにした。

富士見パノラマで友人の知り合いの人たちと落ち合い、最初の1回目、みんなで一緒にCコースを下ることになった。富士見2回目でDH初心者レベルの私を気遣ってくれてのことだと思う。
しかし、実は高峰山やレースも含め、DHコースといわれるところをバインディングペダルで降りるのは今回初めてなのだ。今回は往復の自走だけで26km以上あること、下りの最中にペダルから足がずれて何度も怖い思いをしたことから、バインディングペダルを試してみたのだが、走り始めてすぐに後悔した。ペダルから足が動かない、ということも思いの外怖いのだな、ということを実感したからだ。
ダウンヒルバイクで颯爽と降りる友人たちについていくことができず、一人のろのろと下ってしまった。彼らはかなりゆっくり降りてくれたらしいのだが、私にとっては第1走目から全力疾走だった。友人から「楽しめた?」と聞かれるが、とてもそんな余裕はない。恐怖で体が固まっていたと思う。
友人の知り合いの人たちはその後AコースやBコースなど、上級コースに進んだが、1本目の出来具合から、私はそれらのコースは無理だと判断した。このため、友人はその後2回Cコースにつきあってくれたが、たぶん彼はAコースなどでかっ飛ばしたかっただろう。Cコースの、私のスピード域では十分に楽しめていないのがわかった。ちょっとかわいそうなことをしてしまったと思う。
しかし、それでも3回目の途中まではどうしても楽しむ余裕を持てず、恐怖がそれを上回ってしまうような状況だった。その3回目、途中で友人がマシントラブルを起こしたこともあり、残り半分を一人で降りることになった。友人が追いつくのを待つつもりで速度を落としたことにより、私はあることに気づいた。とても楽しいのだ。その速度域は私でも十分にバイクコントロールができるし、路面状態のいい場所を選んで走行するなどの余裕も持てるようになったのだ。先ほどまで気になって仕方がなかったバインディングペダルも、全く怖くないどころか、安心感すら得られたのである。
つまりは、楽しさの基準は人それぞれなのだ。友人たちは技術的な水準が高いこともあると思うが、楽しさを感じられるスピードやコースの難易度はずっと高いところにあるのだ。それに対して私の場合はそれがもっと低いのである。話を聞いていると、友人などはぎりぎりのスリルを楽しんでいるように感じられることもあるが、私の場合はそれでは恐怖以外の何者も感じることができない。むしろ私の場合、周りの景色を楽しみながら安定して降りることが楽しいようである。

午後は、みんなでAコースを走ってみようという。ただ、私は徹夜してしまったための不調と、装備不足が心配だ。転倒時に胴体を守るプロテクターも持ってきていないし、私のバイクはほかの人たちが使っているダウンヒルバイクでもない。タイヤも自走を重視したため、あえてDH用を装備していない。何より、私はAコースが自分が楽しめる速度域や難易度を超えた範囲にあるという先入観があって、躊躇した。

しかし、友人にはずっとCコースにつきあってもらっていたし、速度さえ落とせばAコースも走ることは可能だという言葉に負けてAコースを走ってみる決心をした。とりあえず、ペダルをフラットに変えてみたのだが、いざバインディング対応シューズで乗ってみるとずるずると滑ってしまう感じがある。かなり不安になった。
その後、Aコースをスタートしたが、すぐに急な下りがある私がここにさしかかった時には前の人はもう誰も見えなかった。この坂を降りきったとき、私の両足は見事にペダルから滑り、おしりをサドルに打ち付けた。その勢いで前につんのめりそうになるがすんでのところで止まったのだった。目前には私にとってはキョーレツなドロップオフがある。ここをどうやって降りようか思案したが、一度止まってしまうともうどう降りていいかどうかわからない。もし、こんな場所がずっと続くのであれば、現在のペダル+シューズの組み合わせでは降りるのは不可能だろう。
私はここでAコースをあきらめ、コースの外に出て、上まで戻った。そこで友人の携帯に電話し、残念ながらリタイアの旨を告げたのだった。
ただ、ケーブルカーで一人戻るのは忍びず、Cコースでゆっくり降りることにしたのだが、この判断は軽率だった。Aコース同様、両足がペダルの上をツルツル滑り、とても軽快に降りることなどできなかった。スピードを上げられないため、頻繁なブレーキングが必要となったこともあり、この1回の下りだけで、激しく体力を消耗してしまったのだ。

徹夜明けで体力的に危険も感じたし、私の下りはこれで終了となった。調布ICからの帰りはCコースの2本分の距離があるし、その分の余裕も持たさなければならなかった。

今回は帰ってから装備の問題や体調の不良など、いろいろな観点から考えてみた。
装備に関しては、往復26km走らなければならないため、仕方がない部分があった。フラットペダル+DHタイヤでは、調布ICに到着する前にばてていただろうし、帰りの体力も残せなかったかもしれない。もちろん、重量的にプロテクター類やフラットペダル用のシューズを持つことも困難だった。
体調も最悪の状態だった。健康運動を指導する立場の人間が、こんなことで事故など起こしてしまったら、示しがつかない、と反省している。

だが、一番の問題はせっかくの機会を楽しむ余裕をなかなか持てなかったことではないかと思う。私は、友人たちのペースに合わせようという気持ちを優先し、明らかにオーバーペースで走った。それでも、全く彼らに追いつけない焦りが、さらなる無理と恐怖を呼び込んでしまうきっかけとなったのである。
私はきちんと彼らに「しばらく調整させてくれ」と明確に伝え、自分のペースを守るべきだったと思う。そうしたら、おそらく恐怖心を楽しみに変えるタイミングはもっと速く訪れたのではないかと感じたのだ。楽しみの基準や楽しみ方は人それぞれ異なるので、現時点で私が感じていることをもっと明確に友人たちに伝え、行動すべきだった。

楽しくなければ続けられない。今後も上手にMTBとつきあっていきたいものだ。