ロードバイク

私は自動車の免許を持っていない。東京においては交通機関が発達しているので、その必要性を感じないうちに時間が経ってしまったのだ
その代わりといってはなんだが、私にとっては自転車が重要な道具となっている。

私が本格的なスポーツ車を利用するようになったのは、1988年のこと。当時在籍していたスポーツクラブの先輩社員Hさんからロードバイクを譲っていただいたことがきっかけだった。
その最初のバイクはdiossというメーカー(ショップ?)のもので、車体はクロムモリブデン製と思われる。フレームは小さめでなかなか軽量だった。それまでにも3台のロードバイクもどきの自転車を利用したことはあったが、それらはママチャリの延長のようなタイプの自転車であり、車体重量もかなり重くタイヤもかなり太かった。大学時代に中古で購入した1台は5,000円、高校時代に新車で購入したものでも2万円台前半だったと思う。
それに対し、いただいたロードバイクはHさんが購入した当時で10万円を超える、かなり高価な製品だったと記憶している。それだけに乗り心地も全く違っていた。
本当は、Hさんへのお礼にシティサイクルをプレゼントするはずだったが、私が突然大阪に転勤になり、その大阪で会社を辞めてしまったことで、話がうやむやになってしまったのだった。ほんとうに申し訳ないことをしたものである。Hさん、お元気でしょうか?

その次のバイクは1992年、結婚の少し前に自費で購入することになった。こちらは当時流行り始めたカーボンという素材でできたフレーム、アルミ製のフォーク(前輪を支える部分)・ステー(後輪を支える部分)を備える、MIYATA(ミヤタ)製の自転車”ALFREX Carbon”である。当時としては比較的軽量の10.5kgだったと思う。定価145,000円のものを110,000円台で購入した記憶があるが、ほとんどが日常的な通勤のための利用であった。一度甲州街道で自転車乗りのお兄さんに話しかけられたことがあり、「通勤だけじゃもったいないですよ」といわれたこともあったなあ。
このロードバイクでは、購入直後に事故を起こしたりもしたが、反面いろいろな思い出が詰まっている。たとえば1994年の夏、このMIYATA ALFREXと先代のdiossを私の生まれ故郷の種子島に持ち込んだことがある。妻と一緒に、西之表市にある祖母の家から種子島の最北端にある浦田海水浴場を往復したのだ。妻がdioss、私がALFREXに乗り、ハードな坂道を乗り越えながら海水浴場を目指した。二人で派手な格好をして自転車に乗っていたのが珍しかったのか、通りすぎる自動車に乗っている人の視線が集まったことを覚えている。そればかりか、海水浴場ではショッキングピンクのビキニをおそろいで着ていたこともあり、周囲の痛い視線を浴びてしまったのだった。
このALFREXは購入後にパーツを付け替え、手元で変速できるレバー(STIレバー Shimano 600 ULTEGRA)に変更したのであるが、これが比較的短期間で不調となり、どんどん変速できなくなっていった。最後には変速不可能なまま乗っていたが、その後は妻用に購入していたGIANTのMTBを借りることも多くなった。
その後、子供も二人生まれて、自転車に投資するお金も捻出できなくなったし、なによりモチベーションが下がってきたことで自転車から徐々に遠ざかっていった。2002年になるころ、私のマンションの管理会社が誤って私の妻のMTBを処分してしまってからは、まともに乗れる自転車はなくなってしまったこともある。

しかし、2003年になるとまたしても無性に自転車に乗りたくなってしまったのである。そこでALFREXを修理しようと考えたのだが、変速機その他のパーツの傷みが思ったより激しく、さらに最近のパーツにおいては同じグレードの製品は8速から9速にグレードアップしていたため、多数のパーツを交換しなければならないことがわかった。このALFREXを再び走らせるためにはかなりの出費が必要になるのだ。
このような状況なので、新車購入の検討を始めた。しかし、ロードバイクの新車は非常に高価だ。もしロードバイクを買うのであれば、今後も長く乗ることを考えているので、ALFREXと同等のグレードのものがほしい。そうなると、10万円を超える出費になってしまう。
そんなとき、ディスカウントショップでMTB(マウンテンバイク)が非常に安くで売られているのを発見してしまう。最近のMTBは2万円台のものでも、車体にアルミが使われていたり、サスペンションが前後に装備されていたりする。とりあえず、自転車がないと乗りたくても乗れないので、私はディスカウントショップに並んでいた車種から一つ選択することにした。そして、2003年5月、Jeepというメーカの2003年モデル”JEEP2 (WRANGLER TOLEDO)”を約32,000円(定価39,000円)で購入したのだった。
ところでマニアにいわせると、ディスカウントショップに並ぶ5万円以下のバイクのことは”MTB”とは呼ばず、”MTBルック車”と呼ぶのだそうである。つまり、見かけはMTBだが、本質はMTBではない、ということだろうか。10代のころに乗っていたロードバイクのようなものもロードバイクのルック車だったといえるのかな? ルック車とそうでないMTBを見分けるのに「悪路不可」のただし書きがあるかどうかが一つの目安になるそうだが、私の購入したJeepという車種については、見事に「悪路を走らないように」という注意書きがある。
ただ、私は山や荒れ地に命をかける予定はないので、それ以上高価なMTBを購入しようという気持ちは全くなかった。
このMTB(ルック車?)は、現在までの9カ月間に3000kmほど乗っていて、今では後輪のタイヤもツルツルな状態になってしまっている。
この自転車は、比較的近距離(10km以内)を乗ることを考えれば非常にいいマシンだと思った。ロードの時は歩道の乗り入れなどで車体やタイヤを傷めることがあるため非常に気をつかったものだが(とは言っても、障害物でパンクしたのは1回だけだが)、タイヤが太くダブルサスペンションタイプのJeepの場合は全く気にする必要がない。上半身もロードタイプに比べると起きているので、下背部や首の疲労などを感じることもない。
しかし、10kmを超えるような長距離を走る場合は話は別だ。16kgとはいえ、やはり車体は重く感じるし、タイヤが太いためペダルを踏み込んでも前に進んでいる感覚が少ない。車道などに出ると、スピードが思ったより出ないので自動車の流れに乗るのが難しく、むしろロードバイクよりも気をつかう場合がある。結局、昔はロードバイクで30分以内で行けた距離が、Jeepでは40分もかかってしまうのである。まあ、当時より体力が低下している可能性もあるし、性格がおとなしくなってしまって無茶な運転をしなくなったことも一つの原因かもしれないが。
私にとっての自転車は、とてもいい有酸素運動になっていると思う。しかも、そのスピード感や快適さから、長続きをさせやすい趣味であるといえる。Jeepは悪くはないが、長く乗っていると20代〜30代前半にかけて乗っていたロードバイクのスピード感や直進の快適性などが懐かしくなってしまう。
そこで、私は改めてロードバイクに乗る決意をした。自転車にとても詳しい友人のKさんに相談し、MIYATA ALFREXのパーツの交換、もしくは新車購入のいずれかの方法を検討し始めた。ALFREXを復活させる場合に必要なパーツもすべてKさんに洗い出してもらい、パーツのグレードを下げることで当初予想していたよりも安価で揃えられそうなことがわかった。組み立ても彼が担当してくれるというので、予算はかなり抑えられそうである(それでもJeep2よりはずっと高くなってしまうのだが…)。
また、Kさんは、新車を購入する場合のポイントも教えてくれたので、それを念頭に雑誌やインターネットで調査したり、複数のショップを訪れたりして情報を集めた。
その結果、パーツを交換する場合と新車を購入する場合の選択肢を絞り込めてきた。

【パーツ交換の場合】
1. 8速に対応しているSTIレバーを購入し、その部分だけを交換する(最安)。
→8速に対応しているShimano製パーツはSORA(ST-R3300)もしくはST-R500。使い勝手が”MIYATA ALFREX”に取り付けた600 ULTEGRAに似ているという観点から、ST-R500を選択したい。
2. 変速系のパーツをすべて9速対応のものに変更する
→9速に対応しているパーツのセットとしては、Shimano製のTIAGRAのセットが候補となる。MIYATA ALFREXに取り付けた600 ULTEGRAと同等の使用感を求めるのであれば105シリーズというパーツが望ましいらしいのだが、費用がかなり異なってくる。

【新車購入の場合】
1. ANTARES 201 or 301
ANTARES 201シリーズは安価でありながら高性能な入門用ロードバイクとして知られている。アルミフレームにカーボンフォーク、カーボンシートステーを採用し、8.8kgと軽量だ。301はそのトライアスロン用の仕様となっており、タイヤが26インチとなり、8.7kg程度とさらに軽量となる。両者ともに10万円ということなので、価格性能比率から、これらが購入の第一候補だ。
2. GIANT TCR
こちらも128,000円と比較的安価で、8.6kgと軽量だ。トップチューブがスローピング(サドル側が低くなる)になっているのも今風で、色もイエローと明るくて良い。
3. Intermax Rays
GIANT TCRと同じ128,000円。阿佐ヶ谷のショップのWebサイトでこの製品をかなり魅力的にカスタマイズしたものが紹介されていて、128,000円とある。重さは非公開のようで詳細はわからないが、トップチューブがややスローピングになっていて、比較的好きなデザインだったので候補に入れた。
4. TREK 1000-1400
TREKは、最も興味があるメーカで、10年くらい前にもほんとうに欲しくてたまらなくなったことがある。ツール・ド・フランスを5連覇中のランス・アームストロングが乗っているメーカとしても知られている。実は、今回の自転車の比較検討中に、あるオークションに出品されていた10年前のTREK 5200シリーズ(10年くらい前にほんとうにほしいと思ったその車種)を落札しようと試みたのだが、残念ながら手が届かなかった。
しかし、TREKの5200以上のOCLVカーボンの車種は安くても30万円台の後半であり、とても手が届かない。そこで、TREKの入門バイクである1000-1400くらいの車種に目をつけた。これらは7万円台から販売されているが、素材やパーツなどのグレードがかなり落ちる感じがするので、実際に見て確認するしかない。

上記のように候補を絞り込んだところで早速行動を起こすことにした。最初は、パーツおよびIntermax Raysのカスタマイズ車、TREKの低価格バイクを置いてある、阿佐ヶ谷のショップを訪ねてみることにした。このショップは地上4階、地下2階の非常に充実したショップで、過去に私がMIYATA ALFREXのパーツを交換した際もこちらで購入したのだった。
今回は2歳の次男を連れてきていたので、あまり迷っている暇はない。効率よく見ていく必要があった。

まず、3FでIntermax Raysのカスタマイズ車を見てみると、価格が18万円になっていた。Webサイトの表示と異なるが、恐らくWebのほうはベース車の価格を表示していたのだろう。ベース車のほうにはあまり魅力を感じなかったので、Intermax Raysはここで購入候補から外すことにした。
次に、同じ3FにあったTREKの1000-1400シリーズを見てみた。7万円台のものから10万円台前半のものまでが数台展示されていた。やはりTREKは結構かっこいいので、少し心が動いた。ただ、最安価のものはパーツがShimanoのSORAという製品で、MIYATA ALFREXにつけたSTIレバーとは操作の仕方が異なる。このため、11万円以上のシリーズに目を向けたが、フレームの継ぎ目の溶接の処理などが、現在乗っているJeep2と同程度なのが気になり、購入の決断はできなかった。

以上のことから、阿佐ヶ谷のショップの新車についてはいったん保留し、B2Fに降りてパーツを吟味することにした。
まず、第一候補のSTIレバーであるが、ST-R500の実物はまだなかった。昨年末の新製品ということで品薄なのか、インターネットショップなどを見ても入荷待ちになっていることが多かったのだ。次に、ShimanoのTIAGRAのコンポーネントも見てみたのだが、いろいろなグレードのコンポーネントが並んでいるのを見ると、やはり上位の製品である105やULTEGRAを狙いたくなってしまう。しまいには、当初Shimanoの製品しか頭になかったのに、Campagnoloの製品の美しさにも心を動かされ、パーツ選びはまさに混迷を極めてしまったのだった。このようなわけで、頭が冷えるまでパーツ選びも保留。

だんだん、次男の機嫌が悪くなっていく。「かえる」「かえろう」を連発し始めたので、阿佐ヶ谷のショップでの検討はここで終わり。

夕方になり、今度は残りの車種の購入を検討することになった。
Kさんのおすすめ(注:私の予算内での)でもあるANTARESは第一候補なので、まずそれを置いているショップを探さなければならない。この車種については系列のショップしか置いていないので、インターネットで検索してみる。するとその系列のショップが関東圏内に多数存在し、比較的近所の新宿にも2店舗あることがわかった。
まず、私は新宿のアドホックの3Fにあるショップから訪ねてみることにした。長男のサッカーグッズを購入するためにこのビルの6Fを何度も訪れたことがあり、少しなじみがあるからである。今度は一人で出かけているので、製品をゆっくり吟味できそうだ。
中2階から階段を昇って正面にANTARESのコーナーがあった。複数のタイプが展示してあり、候補に挙げている201も301もその中に含まれている。301のハンドル部分を持ってみると、非常に軽い。私が乗っていたMIYATA ALFREXはもっと高かったのだが、こんなには軽くない。わずか10年強の間の技術的な進歩に感心する。
ANTARESのコーナーには、これらの車種以外にも魅力的なものが複数あった。特に、チタンフレームにカーボンフォーク、カーボンステーというバイクには非常に興味をそそられた。18万円ということで、予算では届かない価格なのだが、長く乗り続けるためにはこのような車種を選ぶのがよいのかもしれない。もちろん、これらの素材の組み合わせでの18万円という価格は破格である。
もうこの段階でパーツではなく新車を購入すること、GIANT TCRは見るまでもなくANTARESの201か301を購入する、という意志が固まってきていたので、あとは気楽に広い店内を歩いて見て回ることにした。
ANTARESコーナーの斜め向かいにはTREK 5200が設置してある。36万円台だ。すべての趣味を自転車に費やすのであれば、ほんとうにこの車種を選びたいところである。TREKの1000-1400も設置してあったのだが、阿佐ヶ谷のショップと同じ価格であるし、ANTARESを見たあとでは購入対象外となってしまっていた。

外車コーナーを進んでいくと、LEMONDやGIOSなどのメーカが置いてある。LEMONDにもTREKと同等の格安バイクが販売されていた。車体は結構派手な感じだが、いかにもレーシングカーという感じで嫌いではない。

さらに進むと、BIANCHIのコーナーがある。BIANCHIといえば、少し前まで私のマンションの駐輪場に1台のロードバイクが置いてあったことを思い出す。ちょうど私のALFREXの隣に停められていたそのバイクはかなり存在感があったので、「乗ってみたい」と思うことが多々あった。

さて、BIANCHIのコーナーにあった1台のバイクの価格表示に目を疑う。140,000円。定価ベースでは、私の所持するMIYATA ALFREXより安いのだ。BIANCHIのバイクにこんな低価格帯の入門向け製品って、あったかな? しかもBIANCHIの特徴的なカラーであるチェレステではなく、艶消しのグラファイトブラック。めちゃくちゃカッコいい。ほとんど一目惚れの状態になってしまった。
私がうなっていると、私より少し年上の店員さんがやってきた。私がGIOSのバイクのタイヤに触れていたせいか、店員さんは私がGIOSに興味を持っていると思ったようだ。
「BIANCHIのこれ、かっこいいですね。それにしても、こんな低価格帯の車種ってありましたっけ?」
と聞くと、
「実はBIANCHIは日本の代理店が変わったんですよ。」
とのこと。とりあえず、私はこのバイクについていろいろと聞いてみることにした。
「実は最近MTB(ルック車)にばかり乗っていて、ロードバイクはご無沙汰なんですが、長距離を走るようになるにつれてやはりロードバイクがいいと思うようになってきたんです。それで、ANTARESの201か301を買おうと思ってこちらにお邪魔したんですが、なんかこの車種の魅力にまいってしまっているんですよ。実際に私が乗るとして、ANTARESとの違いはどんなところにあるんでしょうかね?」
店員さんは次のように答えた。
「ANTARESはとてもいいバイクですが、私は初めてロードバイクに乗る人に最適なバイクではないかと思っているんですね。以前ロードバイクに親しんでおられたのなら、もしかしたらANTARES201とかだと不満に感じたりすることがあるかもしれません。」
「というと?」
「多分、お客様はパワーでガンガン漕いでいくタイプではないかと思うのですが(なぜわかる?)、そのように体力的にも余裕があってロードバイクに慣れている、というようなことなら、車体のたわみなどが気になりそうな予感がしますね。それに比べてBIANCHIのこのバイクなら、ペダリングのパワーをダイレクトに伝えられるような感触を得られると思うんですよ。」
いくらロードバイクの経験があるとはいえ、本当の自転車乗りの人から見たら私は入門同然のレベルだと思う。でも、このように体力的な側面でほめられたりすると悪い気はしない。
「この状態(ペダルなし)で重さはどのくらいなんですか?」
「実測していないですが、8.9kgぐらいではないですかねぇ」
それなら、軽量のANTARESと遜色はない。ちょっと持たせてもらうと、確かに軽い。
「トップチューブが斜めに降りていますね。」
「最近はロードバイクでも採り入れられるようになってきたんですよ。後ろ側の三角の部分を小さくすることで、前に進むための効率を高める工夫をしているんです(というようなことを言っていたと思う)。」
「そうですか。でも、なによりカッコいいことが一番かな?」
「そうお思いですか? やはり所有するバイクはカッコいいことは重要だと思いますよ。それに、このバイクのパーツの多くはCampagnoloのVeloceで、デザインもいいと思います。Campagnoloについては、以前は変速がなかなか決まらないという欠点がありましたが、Shimanoの実用新案の期限が切れて、Campagnoloでも同じ技術が使えるようになりました(というようなことを言っていた)。だから、今は変速が決まらないというようなことはなく、Shimanoと使い勝手もほとんど変わりません。」
「Campagnoloは憧れですね。あとは私の予算の問題ですかね。」
そう。大切な予算。
「ANTARESは10万円ですが、ペダルの価格が入っていません。しかし、これ(BIANCHI ML3 Veloce Mix)の場合はペダルやボトルの額も込みなんです。したがって、多分トータルの価格差は15,000円程度になると思いますよ。」
これを聞いたあと、さっきまで私の心の中で完全に決まっていたはずのANTARESがほとんど消え去ってしまっていた。
「ちょっと広いところに出してみますか。お客様の身長だとサイズ510かな?」
そういって店員さんは、510というサイズのバイクを取り出した。
「このバイクは日本ではなく、イタリアで組み立てられています。ですから、左がフロントブレーキ、右がリアブレーキなんですね(あとで前述のKさんに聞くと、もともとはそれが標準なのだとか)。もし気になるようでしたら、左右を交換することができますよ。その場合、即納は無理になってしまいますけど。」
「最初は危なそうだなあ。でも、慣れですかね?」
「私はMTBとロードバイクでブレーキが逆になっていますが、問題なく乗りこなしていますよ。また右利きの人の場合は、逆に右がリアのほうがいいのかもしれないですね。」
広いところに出たバイクにまたがってみたり触ってみたりいろいろとしてみたが、非常にいい感じだ。なにより、一目惚れなので、差額を惜しんで我慢して別の車種を買うよりも所有欲が満たされる。
「これください」
「毎度あり」
ということで、私はBIANCHI ML3 VELOCE MIXのオーナーとなることが決まった。
併せて、スピードメーターも購入していたいと考えていたので、それを伝えると、
「そういうことなら、急に高価な製品を選んでいただいたということで、今回は特別に」
とコードレスメータをつけてくれた。同じメーカの定価ベースでは一番高価なものだ。これはありがたい。ANTARESとの価格差がさらに縮まって、お買い得感はあった。
その後購入手続きをする中、
「お客様。せっかくですから、体格をできる限り測ってみませんか。」
という話になった。これがショップで購入する利点であろう。このバイクはこのショップで購入すれば定価だが、インターネット通販で買えばずっと安い。だが、自分に合うようにマシンをセッティングし、アドバイスをしてもらえるのがショップで直接購入する場合の利点なのだと思う。
購入手続きを済ませたあと、さまざまな角度から体位測定をしていただいた。その後、新宿で食事をするために家族と待ち合わせをしていたので、私はいったんショップを出て、閉店の前に取りにいくことを伝えた。それまでに定員さんのほうで私の体位に合わせてマシンをセッティングしてくれるとのこと。

Bianchi ML3 Veloce Mix 2004
Bianchi ML3 Veloce Mix 2004

そして約2時間後、私はショップに戻った。先ほどの階段から昇って正面に「中原様」と書かれた自転車が見えた。
「あっ。俺の自転車だ。」
と思って近づくと、なんだかさっきよりでかくなったような気がした。
そのとき、別の人を接客していた先ほどの店員さんがやってきた。
「実は、さっきの体位測定の結果を総合してみたら、腕の長さや脚の長さなどの観点から、フレームサイズは530がベストであることがわかったんですよ。それで、急遽530にてセッティングさせていただきました。」
とのこと。どうりで微妙に大きく感じられたわけである。
「ハンドルよりサドルの側が6cm高い設定です。現在の体位測定の結果からはベストの位置を選んであります。最初は違和感を感じられるかもしれませんが、しばらく乗ってみてください。購入後1ヶ月感は無料で調整しますから、遠慮なくおっしゃってください。」
ということでとりあえず一安心だ。

最後に店員さんは、このバイクをエレベータに乗せて中2階まで運んでくれた。そのとき気づいたのが、バイクのエレベータへの乗せ方。ハンドルを持って、サッと持ち上げ、後輪一本で立てる。そうすると実に楽にエレベータに乗せることができ、車体のコントロールも容易なのだ。私はその日から早速実行しているのだが、その後、『ファンライド』という雑誌の最新号を見たら、この方法が掲載されていることに気づいた。「長くロードバイクに乗っていて、そんなことも知らんかったのか?」といわれそう。

最初に新宿から杉並区の自宅までの5.5kmを乗って帰るのはとても恐ろしかった。ものすごい前傾姿勢になるし、ブレーキは今までと逆。しかも、軽すぎて、時に安定性を失っているように感じてしまうのである。こんなわけで、自宅までは気をつけて非常にゆっくりと走ったのだが、あとでスピードメーターの最高時速を見ると41.0km/hとなっている。多分坂を下りたときだと思うが、知らないうちにスピードが出てしまったようだ。ロードバイク、恐るべしである。

初日はとても怖かったBIANCHI ML3 Veloche MIXだが、2日目以降はもう何も感じなくなっていた。軽くペダルを踏んだだけでスピードが出るし、車道に出た場合も車の流れに自然に乗れる。MTBと比べて車道を乗る比率が大きく、緊張感は高いが乗っているときの楽しさや爽快感は格別だ。

出費はあったけど、ロードバイクにしてよかった。また、一目惚れした車種に決めたことで一切の後悔がなく、所有する満足度が高かったことが、私にとって今回最高の出来事かな。

→ 今回購入したお店「ジョーカー本館(http://www.jitensya.co.jp/joker.html)」