太極拳と呼吸の科学―サイエンスする心・息・動

太極拳が「健康にいい」というのはよく聞きますが、「腹式呼吸でリラックス」とか「全身に気血を巡らせることで健康になる」とかいうような話で終わってしまうことが多いように思います。私たちが知りたいのは「腹式呼吸を行うと体にどのような影響があり、それがどのように健康につながるのか」「気血って何? それがなんで健康に関係があるの?」というところでしょう。
この書籍では、太極拳の運動や呼吸運動と、運動生理学・機能解剖学をうまく組み合わせており、一般の人にとっては少々難しいところもあると思いますが、太極拳をやることによって私たちの体に起こる「本当のところ」をよく表現しているのではないかと思います。
他の武術系身体操作の書籍だと、通常は使われない著者用語のようなもので解説されることで、現実の運動イメージとは乖離している場合も多いので、このようなアプローチは私のような人間にとってはありがたく感じます。
詳しく読むと私が過去に体験した南方の中国武術とも通じる部分があり、必ずしも別物ではないと興味深かったですね。日本で紹介される中国武術の書籍だと「南方の武術は北方の武術や太極拳などと比べると力任せで低級」のようにいわれることが多いですから。

ちなみに南方の拳法がなんでも力任せ、なんてことはないですよ。むしろ、私などは高級といわれる陳式太極拳と組み手をしたとき、その荒々しさに驚いたくらいです。強烈な体当たりに地面へ叩きつけるような投げ。