アスリートのためのコアトレ―100のエクササイズ12の処方箋

その昔、空手をやっていた私が中国武術の練習を始めるようになったころのこと。中国武術の先生や先輩方は私の関節や筋肉が固いことを盛んに指摘してきました。180度近く開脚できて、なおかつ上半身を床につけることができる私の関節や筋肉が「固い?」。
「力が入りすぎているんですよ。」
「力を抜きなさい。」
「力が抜けないと、筋肉の(使い方の)再学習ができないから。」
この先生と武術に出会ってから、私は体に対する認識が大きく変わったわけですが、本日この書籍を読んでそのときのことを思い出しました。
当時の私は、その中国武術の最初の型を練習することで、「脱力」を進めました。もちろん、それまで練習していた空手にもそういう鍛錬法はあったのですが、中国武術のほうは「先人の感覚」を「自分の体に再現」するための指導法がもっと体系化されていて具体的だったと思います。
この武術の基本型はきわめて高度なディファレンシャル・リラクセーションを実現するものでした。ディファレンシャル・リラクセーションとは、必要な筋肉がその動作を行うために最低限の努力で働き、それ以外の筋肉はギリギリまでリラックスしているような状態のことです。
ただ、このような練習を行ったとしても、中心軸を作る脊柱を重力から解放することは困難です。私自身、脊柱の状態については理想的な状態を保っているとはいえず、さまざまな方法を試行錯誤中なのです。

そういった難問を解決する一つの手段が、この書籍に紹介された一連のプログラムです。
「コア」の基礎知識から「コア・リセット」の実践。その後の筋の「再教育」。さらに、各スポーツ向けのコアトレのプログラム処方が紹介されています。
「コア」というと、ずっと昔からいろいろなことが言われ続けていますが、非常に漠然として曖昧です。しかし、この書籍では著者の有吉先生なりのコアを(というふうに、きちんとことわっていらっしゃるところがすばらしいと思う)、非常に具体的に、解剖学的な基礎知識も含めて解説されているのです。個々の筋肉にふれたものは多いのですが、よく見ると、それらの筋肉の連携についてまで言及されているではありませんか。ちまたにはさまざまな身体運動の本があり、私も大変参考にしてはいるのですが、あまりにも曖昧すぎてどうにでも解釈ができるため、煮え切らない気持ちになることが多々あります。しかし、この書籍は一般の人やアスリートに対する情報の「透明度」が高いと思います。つまり、「客観的に再現できる形」で伝わる、ということです。

私が特に興味を持ったのは、コアの「リセット」(本来あるべき姿に戻す)の部分です。この方法で紹介されているストレッチポールを使うなら、確かに脊柱を重力から解放できることでしょう。私が、空手や中国武術を習っていた当時にこの方法を知っていたら、おそらく脱力と筋の使い方の再学習効果はずっと高まっていたと私は思います。

有吉先生の書籍については、さらに読んでみたいと思いました。

使える筋肉・使えない筋肉 実技編―強くて使える筋肉をつくるトレーニング法120

以前このコーナーでも紹介させていただいた『使える筋肉・使えない筋肉』の続編です。
使える筋肉・使えない筋肉』には大変啓発されたわけですが、今回の実技編はそれ以上のインパクトがありました。
現在、競技能力を高めるための補助トレーニングとしてウエイト・トレーニングを行っている方々には即、役に立つと思います。私自身、自分のためにトレーニングにいろいろな工夫を盛り込んでいるのですが、それらはすでに名前をつけられ確立されたメソッドであることをこの書籍によって初めて知らされたり。
筋トレのプログラムを筋肥大 + 筋力向上目的、筋肉の力の発揮の仕方を改善する目的に分けたものは今までにもよく見かけましたが、この書籍は前者を「ヘビー系」と「トニック(パンプ)系」に分け、それぞれに具体的なやり方とプログラム処方を紹介した点で画期的だと思っています。もちろん、多くの経験者がそういったものが存在して、実践をしていると思うのですが、これだけ整理して、その組み合わせ方なども含め紹介しているのを見たのは私は初めてです。

また、各種目に関する紹介の仕方がなかなかいい。フィットネスクラブなどでは、実際どの筋肉を使っているかわからない、という声をよく聞きますけど、重要なポイントについて簡潔にわかりやすくまとめています。いい例と(現実的な)悪い例を写真で見比べられるのはとてもいいと思います。誌面の関係もあり、詳細、というわけではないのですが最も注意すべき点をピックアップして紹介しているので、かえって迷わずに済むかもしれません。
筋肉の力の発揮の仕方を改善するためのエクササイズについては、筋肉のフルストレッチをねらったり、チーティングを取り入れたりしているため、写真だけでは難しく感じるかもしれません。こういった書籍にはDVDが付属するとよりいいのではないかと思います。

現在、この書籍を読み終えたあと、谷本先生の『筋トレバイブル[アスリート編]』と『筋肉をつける、使う、ケアする』と見比べたりしているのですが、これらについてはまた別のコーナーで紹介させていただきたいと思います。ちなみに、後二者は中身が同一みたいです。

“筋肉博士”石井直方の筋肉まるわかり大事典―筋肉のヒミツ、トレーニングの極意、栄養&食事法まで

名実ともに「筋肉博士」の石井先生の著書というだけで、もうおすすめしたくなってしまいます。先生の著書はすごく貴重で専門的なことが書かれているのにも関わらず、楽しく読めてわかりやすいんですよね。健康体力研究所さまの機関誌のコラムなどを読んでいるとすごく貴重な情報が書いてあって、いつか書籍にまとまったらいいな、これなんて思っていました。
この書籍は特に一般向けに書かれている読み物とはいえ、研究室の最新情報まで書かれていて、私が初めて知る情報もかなりありました。
フィットネス・エクササイズ、トレーニングに不可欠の「骨格筋」について、もう少し詳しく知りたい方はぜひ。フィットネス・クラブのインストラクターの方も、話のネタづくりにどうぞ。

みんなのレジスタンストレーニング―安全で効果的に筋トレを行うための知識と「部位別メニュー」

私の持っている資格は「健康運動指導士」で、対象となる方の健康を維持・増進することを目的に運動プログラムをデザインする役割を担っています。
私が養成講習会を受講し、試験に合格して資格を取得したのは1996年のことですが、その講習会では「健康のための運動は」「有酸素運動」という考え方が基本になっていました。すでに指導現場ではもう有酸素運動一辺倒ではなくなってきている時代でしたが、このときの講習会は「有酸素運動」にすごく固執しているように私は感じました。逆に「筋力トレーニング(レジスタンス・トレーニング)は健康運動としては不適切」というようなことをサラッと言われているのにも、大変な違和感を抱いたものです。
よくよくお話をうかがってみると、講師を行ってくださった先生方の筋力トレーニングに関する知識は、アイソメトリックスのヘティンガーやミューラーの時代で止まっているような状態であることがわかります。現場の意見としては、「これからの運動指導者を育てるのに、これでは情けない」とつっこみを入れたくなったほど。
そういう不満を抱きながらも、私はこの資格を活用しているわけですが、そんな私にとって、この本は大変なストレス発散になりました。多数のデータを元に、筋力トレーニングがどんなに健康維持や増進に役立つか、丁寧に、わかりやすく述べられています。著者の石井先生はボディビルディングの元全日本チャンピオンでもあり、もともと筋力トレーニングの専門家でもあるのですが、この本に限らず、石井先生が書かれた読み物というのはとても読みやすく、またわかりやすいのが特長だと思います。
最近、アンチエイジングという言葉をよく聞くようになりました。もし、この書籍を読めば、筋力トレーニングがなぜ若さを保つのに役立つのか、よーくわかると思います。

FNCバランスコンディショニング―Sports & Fitness

これまでボール(バルーン)に特化した書籍をいくつか紹介してきましたが、そのバルーンを表紙に持ってきたこの書籍はその中でも最も完成度が高いものといえると思います。
もちろん、書籍のタイトルが示すとおり、ボールだけに特化されたものではなくさまざまな器具を使って身体バランスを高めていくための理論と種目の行い方、そして目的別のプログラムを紹介しています。
ただ、たとえばボールですが、実際にボールを使い始めるとき、基底面と身体重心、体軸を作り上げていくイメージを伝えてあげれば(ちょっと飛躍はしますが、高岡英夫先生の「センター」とか「丹田」とかのつくりかたみたいな)、もう少しおもしろみが増すのかな、と感じました。実際、ボールに座って力を抜くだけでも、あるいはそのまま軽く上下に振動させるだけでも、今まで見えなかった体の中の感覚とか、その意識とかに気づかされることがあります。正しく行ったときにどんな感じがするのか、たとえばいつ、いかなる時でも安定しているような心地よさとか、天井から頭頂部をつり上げられているような感覚とか。

この書籍で紹介されているソフトギムは、関連書籍や講習会などで知ってはいるのですが、実はまだ使ったことがありません。今後、取り回しのよいこのボールを使ったエクササイズ・プログラムを考えてみようと思っています。

ストレングス&コンディショニング〈2〉エクササイズ編

「理論編」に対してこちらはストレングス(筋力)、コンディショニングに関する種目の紹介を担っています。
レジスタンス・トレーニングについては、フォームや呼吸などの注意に加え、補助の方法まで記載されています。レジスタンス・トレーニングだけに限定された書籍ではないので、紹介されている種目数は限られていますが、ここに紹介されている種目をしっかり勉強しておけば、他の種目に展開する場合も応用が利くでしょう。別の多くの選択肢から種目を選びたい場合は、専門の書籍をひもといたほうがいいと思います。
しかしながら、クイックリフトやプライオメトリクス、スピード、アジリティ、クイックネスなどのスピード系トレーニング、ストレッチング、バランストレーニング、測定の種目など、紹介されている種目の分野が多岐にわたっていて、全般的な知識を求められる立場のインストラクター、トレーナーには非常に有益だといえるでしょう。
また、普段からスポーツトレーニングに親しんでいる競技者なら、さほど難しいと感じることなく自分のトレーニングに取り込むこともできるのではないかと思います。

ストレングス&コンディショニング〈1〉理論編

こちらは「理論編」ということで、スポーツトレーナーが知っておかなければならない基礎的な知識を総合的にまとめた書籍になっています。
運動生理学、スポーツ医学、解剖学、身体運動学、トレーニング理論など、筋力向上・コンディショニングの指導現場で必要と思われる知識がかなり詳細なレベルで語られており、私も基礎知識を忘れないようにするため、定期的に目を通すのに利用したり、気が向いたときにはじっくり読み直したりしています。
本当に興味がある人でないと読むのは大変かと思いますが、図も多くて私はとてもわかりやすい資料だと思います。私がフィットネス・インストラクターを始めたころは、運動生理学や解剖学など、それぞれの専門書を書店、古書店などで集めてそれぞれの知識を自分で集めていったものですが、これくらい完成度が高い総合的な指針となる資料はなかったと思います。逆にこういう総合的な本から入って、より興味がある専門分野の書籍に入っていくといいかもしれませんね。

運動科学—アスリートのサイエンス

 京大人気講義シリーズと名付けられた一連の書籍の中の一つですが、その名の通り、講義の内容を書籍化した、という体裁を取っています。
 この書籍は通常の運動科学の本の枠を超え、スポーツ科学の最新の知見や研究途上の二軸動作などについても言及されているところで価値を高めています。
 以前、八田先生の『エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング』をこのコーナーで紹介しましたが、この『運動科学−アスリートのサイエンス』にも八田先生が登場して持論を展開されています。この部分については、私も言いたいことはよくわかるのですが、私は「有酸素運動」という言葉が悪いのではないかと考えています。これが前提にあっての八田先生の主張なのか、それとも本当に「100メートル走とマラソンを一つのカテゴリに含めたいのか」はっきりしません。文面を読む限り後者ではなさそうですが、そうなら新しい運動のタイプの分類法を提示するくらいのことが必要なのでは、と切に感じる次第です。

 さて、著者の小田先生の記述ですが、こちらも大変に示唆に富んでいておもしろいです。いや、おもしろすぎます。二軸理論を中心に置いた「走」の分析は、少年時代に足が遅かった私にとっては大変興味深く読みました。
 私の子供時代の思いはさせたくないと、長男には「走」動作の基本をいろいろと教え込みましたが、この書籍に記述されていた分析もかなり盛り込んでいます。現在小学校5年生の私の息子は50m走を最高7秒6のスピードで走り、現在は学年一の速さを誇っていますが、恥ずかしながらこの記録は私の高校2年生のときくらいの記録ではないかと思います(汗)。もちろん、現在はこの長男より私のほうがはるかに速く50mを駆け抜けられますから、私のほうも高校時代よりずっと速く走れるようになっています。

 ただ、二軸理論については私の理解が浅いのかもしれませんが、それだけで説明するのは少々乱暴な気もしています。一軸と二軸は多分に関係し合うもので、それらは動きの局面において一軸が優位になったり、二軸が優位になったりするものではないかと思うんですね。乳幼児の歩きが二軸なのだそうですが、その乳幼児の歩きは理想なのでしょうか? もう少し研究が進むとよりおもしろい成果を期待できそうです。

自分でつくる筋力トレーニングプログラム—年齢・競技・目的に応じた実践的プログラム作成マニュアル

 スポーツ競技のために必要な筋力トレーニングの作り方について述べた書籍です。
 私は『筋トレプログラムの作り方 フィットネス版 – ゼロからはじめる!』のほうも併せて持っていますが、そのフィットネス版が一般向けのプログラムの作り方であるのに対し、こちらは本当にスタンダードなプログラム作りの教科書ですね。
 私がフィットネス業界に入って間もない頃だった1980年代後半は、当時著者の有賀先生が所属されてきた企業のプログラムを採用していて、私もそのプログラムに関する勉強をさせていただきました。この書籍で紹介されている方法もその頃から提供されていたプログラムの影響をたぶんに受けているように感じます。その方法は、アバウトではなく、かなりきっちりとしたものです。

 ただし、この書籍はあくまで「作り方」をテーマにした本ですので、種目の行い方などについてはそれほど内容がありません。種目に関する詳しい方法が知りたい場合は、種目の紹介にテーマを絞った書籍を利用するといいでしょう。
 もちろん、スポーツ選手が自分のプログラムを知ったり修正したりするのにも本書は役立つと思いますが、これからコンディショニングコーチを目指す人や、すでにコンディショニングに携わっていて、知識を整理したい人にもお勧めの書籍です。

筋トレプログラムの作り方 フィットネス版—ゼロからはじめる!

 ここ数年、筋トレに関する効果が比較的知られるようになってきて、それに関する一般向けの書籍も多数出版されています。
 その中で、この書籍は「筋トレプログラム」というものの考え方にテーマを絞った本だと思います。考え方をわかって、自分用のプログラムの作り方へ行き着かせようというコンセプトだと思います。
 もちろん、スポーツジムでも、最初にベーシックプログラムというのを提供してあげて、その次にそれをグレードアップするためのカウンセリングなどを行い、その後も定期的にフォローしてあげる、という体制を取りますが、その最終的な目標はこの書籍のように「自分で筋トレ(およびその他)のプログラムの作れるようになっていただくこと」です。

 フィットネス・プログラムとして筋トレを採用する場合は、日常生活をよりラクに、効率良く行えるために必要な筋力を得ることが大きな目的になります。この書籍では、たとえば布団の上げ下ろしや子供を抱く動作で役に立つ種目をどういうふうに選ぶか、というような具体的なサンプルが提示され、「ああ、種目って、こんな感じで選んでいくんだ」というように、「考え方」を理解するための指針となっています。
 もちろん、実際の動作に役立てるための筋トレとしてはこの考え方では不十分な部分も多いのですが、取りかかりとしては大変参考になることでしょう。

 過去に著者の有賀さんと仕事上のおつきあいで何度かお会いしてお話ししたことがあるんですが、大変誠実な方だったという印象があります。下北沢の施設でオープニングスタッフをするときには、いろいろとご指導をいただいたこともありましたが、当時から日本のトップボディビルダーの一人でしたので、ものすごく説得力がありました。